遺産分割の裁判とは【弁護士が解説】

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掲載日:2015年7月17日|最終更新日:2019年8月20日

遺産分割は裁判できない!?

裁判とは、事実を認定し法を適用して判断する権限を認められた裁判所が行う判定の結果を言います。

裁判という言葉は、日常用語として世間に浸透しており、誰でもイメージできると思います。

そのため、相続発生後、遺産分割について争いがある場合、よく「裁判で決着をつけたい」というご相談を受けます。

しかし、厳密に言うと、遺産分割自体を裁判によって解決することはできません。

それは、遺産分割について、司法機関が関与しないという意味ではありません。

遺産分割については、司法制度上、調停や審判という手続があります。

もし、当事者同士で解決できず、裁判所に救済を求める場合、裁判ではなく、この調停や審判を利用するということになります。

遺産分割の調停について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

遺産分割の審判について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

遺産分割に裁判がないワケ

なぜ、遺産分割には裁判がないのでしょうか。

遺産分割のような親族間のもめごと(家事事件)については、通常の民事訴訟(他人同士の権利義務の争い)とは異なった配慮がされているからです。

まず、身内同士の争いなので、裁判のように一刀両断的にどちらかが正しいと判断するのではなく、できるだけ話し合いで解決しよう、という配慮があります。

そのため、遺産分割では、家裁を利用する場合、まず、調停手続きという話し合いによる解決が原則とされています。

また、調停で解決しない場合は審判手続に移行します。

審判手続は終局的な判断が得られるという点では裁判と似ています。

しかし、審判手続は民事訴訟と異なり、広範な裁量によって紛争を処理する手続です。

また、非公開で、職権による事実の調査や証拠調べが行われ、弁論権をはじめとする手続きにおける当事者の主体的な地位の保証が希薄であると言われています。

 

 

遺産分割に関連する事項の裁判

小倉オフィス上記のとおり、遺産分割そのものは、調停や審判で解決することになります。

しかし、遺産分割の前提である「遺産の範囲」や「相続人の範囲」に争いがある場合、この争いを解決しない状態で遺産分割の調停で合意しても、後々その効力が争われることがあります。

それらを確定させるには、遺産の範囲や相続人の範囲を確定する訴訟を提起することが必要になります。

例えば、次のような場合が考えられます。

具体例 遺産の範囲が問題となる事例

  • 預貯金の有無
  • 預貯金及び現金の金額についての争い
  • 不動産が遺産であるか否かの争い
  • 動産(高価な貴金属など)の帰属の争い

上記なような遺産の帰属に争いが生じている場合、遺産分割調停や審判ではなく、民事訴訟で確定すべき事項といえます。

なぜならば、対象財産が遺産であるか否か確定しないまま、仮定の上に協議を重ねても、議論がかみ合わず、合意がまとまらないと考えられるからです。

したがって、遺産の帰属について争いがある場合、遺産確認の訴えを行うことがあります。

 

遺産確認の訴え

遺産確認の訴えは、対象財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める裁判です。

原告の請求が認められると、対象財産が遺産分割の対象であることが確定するので、これを前提として、遺産分割調停や審判を行うことが可能となります。

もっとも、訴訟は一般的に長期化する傾向にあります。判決が確定するまで数年間が経過することもめずらしくありません。

そのため、遺産の帰属について争いがある場合でも、あえて調停や審判を申し立てることもあります。

裁判所裁判例も、遺産分割の前提問題について争いがある場合、常に民事訴訟の確定を待たなければならないとまではせず、遺産分割の審判手続きにおいて、遺産分割の前提事項の存否について審理判断したうえで分割の処分を行っても差し支えないと判示しています(最決昭41.3.2)。

実務上、遺産の帰属について争いがあるケースでは、家裁から訴訟を進められることがありますが、話し合いや裁判所からの説得等で和解の可能性もあるので、調停や審判の解決を検討してもよいと思われます。

例えば、次のような場合が考えられます。

具体例 相続人の範囲が問題となる事例

  • 認知に関する争い
  • 推定相続人の廃除の争い
  • 相続人の失踪宣告
  • 離婚無効、婚姻無効、縁組無効など身分関係の争い

これらについては、遺産分割前に解決すべき問題であり、判決あるいは審判において確定してから遺産分割の調停等で解決することとなります。

 

遺言の効力についての争い

遺言は、一定の要件を満たした書き方を行わなければ「無効」となってしまいます。

そのため、遺言者の死亡後、遺言書の有効性について争いとなることが多々あります。

遺言書が無効となる場合について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

書類遺言書の有効性について争いがある場合、遺言無効確認の訴え等の民事訴訟によって、有効性の判断を確定する必要があります。

また、遺言の方式そのものは無効ではなくても、遺言の解釈に争いがある場合もあります。

例えば、自筆証書遺言では、専門家が関与せず作成されていることが多いので、記載内容が不明確のため争いとなることがあります。

このような遺言書の解釈を巡る争いについても、民事訴訟により確定する必要があります。

 

 

訴訟の流れ

遺産分割の前提事項について、訴訟となった場合、当事者は主張を尽くし、証拠を提出します。

そして当事者が行った主張立証をもとに、裁判官が判決を下すことになります。

記録や書類ここでは、審判手続と異なり、裁判官が独自に調査した資料を判決の基礎とすることはできません。

そのため、当事者がどのような主張立証をするかが全てになります。

訴訟手続は、調停期日と異なり、弁護士のみが出席して期日を重ねた後、当事者が必要に応じて出席するのが一般的です。

当事者が出席するのは、本人尋問が行われる場合や和解期日が行われる場合に限られるのがほとんどです。

 

 

まとめ

以上、遺産分割に関連する裁判について解説いたしましたが、いかがだったでしょうか?

訴訟手続は、調停・審判手続以上に複雑で、法律上も様々な制約があります。

訴訟手続では、1つの受け答えで勝敗を決してしまうことも少なくありませんので、専門家にご相談されることをお勧めします。

また、弁護士をつけると、出席が弁護士のみで足りる期日も多いため、特に仕事をしておられる方は、期日に出席するために日中の時間を確保する手間が省けます。

当事務所の相続対策チームは、相続に注力する弁護士や税理士のみで構成されたプロフェッショナル集団です。

相続問題について、お気軽にご相談ください。

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