遺産分割の審判とは【弁護士が解説】

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掲載日:2015年7月17日|最終更新日:2019年8月20日

遺産分割の審判とは

遺産分割の審判とは、家庭裁判所が当事者の主張をもとに事実認定を行い、これに基づいて公権的な判断(決定)を行う手続のことをいいます。

遺産分割を家庭裁判所で解決する方法としては、審判のほかに調停という手続があります。

調停との違い

調停は当事者間の話し合いによって合意を目指す手続です。

これに対して、審判は話合いではありません。

当事者の意思に関わらず、裁判所が結論を下すことになります。

もっとも、期日の進行具合に応じて話合いの場がもたれ、最終的な結論を下さずに合意する余地が無いか、お互いに検討する機会が与えられるのが一般的です。

合意する余地がない場合は裁判所が決定を行います。

遺産分割の調停手続きについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

遺産分割の審判は調停前置?

離婚の場合、調停前置といって、原則として、裁判を起こす前に、調停を先に行わなければなりません。

これを調停前置主義といいます。

(調停前置主義)
家事手続法第257条 第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
2 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。

遺産分割の場合、審判の前に、調停手続を行わなければならないのかが問題となります。

例えば、「話し合いによる解決ではなく、公平中立な第三者である裁判所に決定してほしい」と感じる方は大勢います。

そのため、弁護士に「調停ではなく、審判を依頼したい」と言って相談に来られる方もいらっしゃいます。

家事手続法は、審判と調停との関係について、次のように規定しています。

(付調停)
第274条 第244の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。

六法全書この条文からは、法律上、調停前置はまったく強制されておらず、当事者は審判手続から申し立てることが可能といえます。

もっとも、裁判所は、職権で調停に付することができると規定されています(これを「付調停」といいます。)。

そして、実際に審判を申し立てると、裁判所はよほどの事情がない限り、付調停にする傾向です。

そのため、実務上は、審判ではなく、調停の申立てをすることが通常です。

 

 

調停から審判への移行

実務上、家裁における遺産分割の流れは、次のようになります。

遺産分割調停で合意が成立すれば一件落着です。

しかし、調停はあくまで話し合いなので、合意がまとまらず、調停不成立となる場合があります。

この場合、自動的に審判手続へと移行します。

すなわち、家事手続法は、「調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす」と規定しています(272条4項)。

このように、調停不成立の後の審判手続は、当然に開始されますので、別途、審判の申立ては不要ですし、手数料の納付も必要ではありません。

 

 

審判の手続

遺産分割の審判手続で、適正な判断を得るためには、説得的な主張を行うとともに、その主張裏付ける資料(証拠)を提出すべきです。

家事手続法では、以下のとおり、主張や証拠の機会を保証するとともに、相手方に反論する機会を保証しています。

①審判における審問

家事手続法は、遺産分割の審判など、一定の事項について、「申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない」と規定します(68条1項)。

また、その陳述の聴取は、「当事者の申出があるときは、審問の期日においてしなければならない」と規定しています(同条2項)。

そして、実務上、この審問が行われることは非常に多く、審判における重要な手続といえます。

裁判審問期日では、同じ部屋に当事者が同席し、裁判官から当事者に質問がなされます。

弁護士に依頼されている場合、弁護士も審問期日に同席して依頼者をサポートします。

また、主張書面や証拠資料を提出するなどして、適正な判断を得るよう尽力します。

審問において立会権はある?

審問において、当事者の意見を聴取する場合、原則として、他の当事者はその審問に立ち会うことができます(家事手続法69条)。

これは、審問の結果を記録化したものを閲覧謄写するだけでは手続保障として不十分であり、陳述する相手の様子を把握することができる状況において審問することが重要であることを考慮したものです。

ただし、他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、立ち会いが制限される場合があります。

例えば、相手から暴力を受けた過去がある、などの場合が想定されます。

ただし、この場合も、弁護士が代理人としてついていれば、弁護士のみ立ち会うなどの運用が行われています。

②審判における事実の調査

裁判事実の調査とは、裁判所が自由な方式で、強制力を伴わずに審判に必要な資料を収集することをいいます(家事手続法56条1項)。

遺産分割は審判の前に、通常、調停が行われています。

事実の調査は、実務上、調停手続きにおいて、当事者が提出した主張書面や証拠資料の中から、裁判所が職権で審判に資すると思われる資料を選択して確認するなどの方法が行われています。

③審判の審理の終結

裁判所家裁は、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除いて、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければなりません。

ただし、当事者双方が立ち会うことができる家事審判の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することもできます(家事手続法71条)。

実務上は、代理人弁護士などの意見を尊重し、審理終結日を決定しています。

④審判日の指定と審判

裁判家裁は、審理を終結したときは、審判をする日を定めなければなりません(家事手続法72条)。

そして、家裁は審理終結日までを通して行われた主張立証を前提に、結論を下すことになります。

審判においては、審判書が作成されます(判決書のようなものです。)。

審判書は、代理人弁護士を選任している場合、その弁護士の事務所に送達されます。

⑤審判の確定

裁判遺産分割審判に対しては、当事者は不服申立て(「即時抗告」といいます。)を行うことができます。

遺産分割の審判に対して、即時抗告できる期間は2週間です(家事手続法86条1項)。

審判は、抗告期間の満了によって確定し、争うことができなくなります。

 

 

まとめ

以上、遺産分割の審判について解説いたしましたがいかがだったでしょうか?

審判手続では、裁判官が独自に調査することもあるものの、基本的には当事者が必要な主張立証をしなければなりません。

そのため、自己に有利な結論を導き出すためには、法律に則り、すべき主張は漏らさず、そして最大限に行う必要があります。

ここで相続問題に精通した弁護士を活用すると、依頼者の方の個別具体的な事情を踏まえた効果的な主張立証を行い、適切な解決を導き出す可能性があります。

したがって、具体的な対応については、相続問題に精通した専門家にご相談されることを強くおすすめいたします。

当事務所の相続対策チームは、相続に注力する弁護士や税理士のみで構成されたプロフェッショナル集団です。

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