遺産である預貯金を引き出した場合どうすればいい?【弁護士が解説】

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掲載日:2019年8月5日|最終更新日:2019年8月5日


無断で引き出された預貯金について、遺産分割の対象とすることが可能です。

以下、相談事例をもとに解説します。

相談事例 相談者:被相続人(亡くなった方)の長女(Cさん)

先日、父が亡くなりました。相続人は、母(A、75歳)、長男(B、50歳)と長女の私(C、48歳)の三人です。

長男は独身であり、実家で父や母と同居していました。

父の死亡後、長男が遺産である預貯金1500万円を私に無断で引き出しました。

上記預貯金のほかに、遺産はありません。

母に対して、預貯金を戻すように言いましたが、聞く耳を持ってくれません。

このような場合、どのようにすればよいでしょうか?

なお、父は生前、長男に対して、300万円を贈与していました。

 

預貯金の無断引き出しの問題

お金遺産分割は、相続開始時に存在し、かつ、遺産分割時に存在する財産を共同相続人間で分割する手続です。

したがって、第三者が遺産を滅失等させて、遺産分割時に存在しなくなった遺産については、本来、遺産分割の対象とはならないように思えます。

ところが、本ケースのように、被相続人(亡くなった父)と同居してその財産を管理していた者等が被相続人の預貯金を無断で引き出した場合、相続人の利益が不当に害されることとなってしまいます。

そこで、相続人の利益を回復するために、どのような法的手段を取り得るべきかが問題となります。

 

 

相続人が取り得る法的手段

損害賠償請求等

弁護士預貯金の無断引き出しについて、相続人は、無断引き出しを行った者に対して、不法行為による損害賠償請求(民法709条)、又は、不当利得返還請求(民法703条)を行うことができると解されています。

この場合、長女Cさんは、長男に対して、375万円を求めることができます。

すなわち、長女の法定相続分は4分の1です。長女は、預貯金1500万円の無断の引き出し行為が自己の準共有持分(1500万円 × 1/4 = 375万円)を侵害していると主張することが可能です。

 

遺産分割の対象とする

預貯金の無断引き出しの事案では、上記のように、損害賠償請求等を行うことが可能です。

しかし、損害賠償請求等は、遺産分割とは異なり、無断引き出し行為の問題についてしか解決できません。

Cさんは、損害賠償請求等の後、遺産分割を行わなければならず、これでは終局的な解決とはいえません。

このような不都合を回避するため、民法は、相続人が遺産分割の清算を望む場合、無断で引き出された預貯金について、共同相続人全員の同意がある場合、当該預貯金を遺産分割の対象とすることができると規定しています(民法906条の2第1項)。

もっとも、無断引き出し行為を行ったBさんが同意をしない場合、Cさんは不公平な状態に置かれることとなります。

そこで、相続法が改正され、無断引き出し行為を行った者については、同意を要しないと明記されました(民法906条の2第1項・2019年7月1日施行)。

【民法】

第906条の2
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しな裁判例い。

 

 

相談事例の検討

お金本ケースでは、亡き夫の遺産は、預貯金の1500万円だけですが、生前、長男は300万円の贈与を受けており、これは特別受益となります。

特別受益がある場合、遺産に当該贈与分を加えます(持戻し)。

したがって、遺産は1800万円となります(1500万円 + 300万円 = 1800万円)。

なお、特別受益について、くわしくはこちらのページをご覧ください。


妻(Aさん)、長男(Bさん)、長女(Cさん)の法定相続分は、Aさん2分の1、BさんとCさんは4分の1です。

したがって、それぞれの相続分は次のとおりとなります。

Aさん 1800万円 × 1/2 = 900万円
Bさん 1800万円 × 1/4 = 450万円
Cさん 1800万円 × 1/4 = 450万円
 【長男の贈与額を控除する】
450万円 – 300万円 = 150万円

以上の通りそれぞれの相続分は、Aさん900万円、長男Bさん150万円、長女Cさん450万円となります。

 

 

まとめ

弁護士宮崎晃上記のとおり、本ケースにおいて、Cさんは、損害賠償請求ないし不当利得返還請求の場合、Bさんに375万円しか求めることができませんが、遺産分割では450万円を取得することが可能です。

したがって、本ケースでは、他の相続人(Aさん)の反対などがなければ、遺産分割まで行ったほうが賢明と言えるでしょう。

もっとも、遺産分割の清算は時間がかかることもあるため、まずは弁護士を通じて、無断引き出しを行った相手に対して、預貯金の支払いを求めるなどの方法も考えられます。

具体的な事案に応じて、取るべき対応が異なるため、預貯金の無断引き出しが問題となるケースでは、相続問題に精通した弁護士に助言を求め、適切な解決となるよう注意すべきです。

当事務所の相続対策チームは、最新の相続法令を踏まえ、親身になって解決方法をご提案いたします。

預貯金の無断引き出しについて、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

当事務所のご相談の流れについてはこちらのページを御覧ください。

 

 

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