遺産の一部を分割できる?【弁護士が事例で徹底解説】

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掲載日:2019年5月15日|最終更新日:2019年5月15日

協議により遺産の一部を分割することは可能です。

また、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合を除き、家裁に遺産の一部のみの分割請求ができます。

以下、相談事例をもとに解説します。

事例 相談者:被相続人(亡くなった方)の妻

先日、夫が亡くなりました。

私(A)と夫の間には、二人の子供がいますが、二人とも結婚して独立しています。

長男(B)は35歳、長女(C)は30歳になります。

相続人は、私と二人の子供だけです。

夫の遺産は、預貯金の1500万円のほかは、自宅不動産のみです。

なお、自宅マンションの価額(時価)は、2000万円です。

自宅については、私が取得するか、売却するか話し合いがまとまっておらず、遺産分割に時間がかかりそうです。

当面、現金が必要なため、先に預貯金のみを分割することはできないでしょうか?

 

 

 

遺産の分割とは

弁護士遺産分割とは、相続人が遺産の分け方を決める手続をいいます。

遺産分割の実行方法について、民法は、協議によっていつでも分割をすることができると定めています(907条1項)。

ただし、被相続人(亡くなった方)が遺言で禁止した場合は遺産分割できません。

もし、協議でまとまらない場合は、相続人は家裁に対し、遺産分割の調停を申し立てることができます(民法907条2項)。

なお、遺産分割の方法には、調停のほか、審判という手続もあります。

調停は、話し合いによって解決するという手続で、審判は話し合いではなく、裁判所が決定するという手続です。

しかし、家裁に遺産分割を申し立てる場合、基本的に、まず、調停を利用しなければなりません(家事手続法257条)。

これは、家事事件については、裁判所の一刀両断的な命令より、できるだけ話し合いによって円満に解決した方がよいだろうという考え方に基づくものです。

遺産分割について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

どんな場合に一部分割できる?

月日遺産分割がまとまらない場合、解決まで長期間を要する傾向にあります。

というのは、家裁の調停手続きは、ゆっくりと進行します。

期日(調停で話し合う日)は、だいたい1か月に1回入ればいい方です。

調停は、1回だけでまとまることはほとんどありません。

1回でまとまるようであれば、そもそも調停ではなく協議で解決しているからです。

仮に、6回、調停で話し合うとすれば、それだけで半年以上は経過します。

このように、解決まで長期間を要する場合、手元の資金がなく困る場合が多々あります。

そこで、遺産の一部の分割が認められています。

もっとも、一部だけの分割によって、他の相続人の利益が害されるような場合は認められません(民法907条2項)。

遺産分割についての民法の条文(遺産の分割の協議又は審判等)

第907条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。


2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。
ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。


3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

 

 

他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合とは?

例えば、他の共同相続人において、特別受益を考慮した相続分を取得できないような場合や、寄与分を害するような場合が想定されます。

特別受益については、こちらのページで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

寄与分については、こちらのページで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

 

 

今回の事例について

税のイメージ画像本ケースでは、亡き夫の遺産は、預貯金の1500万円、自宅不動産(時価2000万円)です。

Aさんは、自宅不動産の遺産分割に時間がかかりそうなので、まずは預貯金1500万円の一部分割を求めています。

妻(Aさん)、長男(Bさん)、長女(Cさん)の法定相続分は、Aさん2分の1、BさんとCさんは4分の1です。

したがって、預貯金についてのそれぞれの相続分は次のとおりとなります。

Aさん 1500万円 ☓ 1/2 = 750万円

Bさん 1500万円 ☓ 1/4 = 275万円

Cさん 1500万円 ☓ 1/4 = 275万円

特に、BさんやCさんの利益を害するおそれがなければ、Aさんは、一部分割によって、750万円を取得することができます。

 

特別受益を考慮した相続分を取得できないような場合

本ケースにおいて、もし、Aさんが亡き夫から生前、1000万円の贈与を受けていたとします。

この場合、Aさんが預貯金の一部分割として、750万円を求めると、BさんやCさんの利益を害することとなります。

以下、具体的に解説します。

特別受益がある場合、遺産に贈与分を持戻して、それぞれの相続分を計算することとなります。

①遺産に特別受益を持ち戻す
遺産に贈与分を加える(持戻し)・・・3500万円(遺産) + 1000万円(贈与分) = 4500万円
②法定相続分に従い計算

Aさん 4500万円 ☓ 1/2 = 2250万円

Bさん 4500万円 ☓ 1/4 = 1125万円

Cさん 4500万円 ☓ 1/4 = 1125万円

③Aさんの贈与額を控除する
2250万円 – 1000万円 = 1250万円

以上から、それぞれの相続分は、Aさん1250万円、Bさん1125万円、Cさん1125万円となります。

もし、Aさんの一部分割を認めると、BさんとCさんは、それぞれ預貯金から125万円しか取得することができません。
足りない1000万円について、不動産から回収するという方法もありますが、通常は現金から取得したいと考えるでしょうから、不利益になると思われます。したがって、このような場合、Aさんの一部分割は認められない可能性があります。

 

 

まとめ

弁護士遺産分割は、分け方だけではなく、対象財産の存在やその評価方法について、争いとなることが多々あります。

本ケースでは不動産の時価を特定していますが、実務では評価額自体が争いとなります。

そのため、相続問題に精通した弁護士に助言を求め、適切な解決となるよう注意すべきです。

当事務所の相続対策チームは、最新の相続法令を踏まえ、親身になって解決方法をご提案いたします。

当事務所のご相談の流れについてはこちらのページを御覧ください。

 

 

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