マンションを共有して賃料を取得する場合の遺産分割協議はどうすればいいですか?


遺産分割協議について質問です。 遺産分割協議について質問です。

私は福岡市中央区に住む者です。

先日、父が亡くなりました。

相続人は、私の母であるAのほか、私の兄(長男)のB、私(長女)Cの3人です。

父の遺産は、以下のとおりです。

・自宅不動産:時価1000万円
・マンション(賃貸借に出している物件):時価3500万円
・預貯金:2000万円

母は福岡県内の自宅不動産に住んでおり、このまま自宅に住み続けたいと言っています。

私と兄も、自宅不動産を取得したいとは考えておりません。

また、母が元気なうちは実家にそのまま住まわせ、独りでの生活が厳しくなったら施設への入所か私達兄弟のどちらかが引き取って世話をしたいと考えております。

マンションは、第三者に賃貸しています。

賃料が月額12万円入ってきていること、また、相続人の誰かが単独で取得して代償金を支払う経済的余裕もないことから、そのまま共有状態を続けたいと考えております。

このような場合に遺産分割協議を行うことは可能でしょうか?

遺産である不動産の共有が認められるか?

お金遺産の相続について、民法は、相続人は、相続開始のときから、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務を承継する(ただし、被相続人の一身に専属したものはこの限りでない。)と規定しています(896条)。

したがって、賃貸に出している不動産の賃貸人の地位のような権利義務についても、相続人は承継できることとなります。

また、本件のように、相続人が複数名のときについて、民法は「相続財産は、その共有に属する」としています(898条)。

さらに、民法は、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」としています(899条)。

したがって、本件では、遺産分割によって確定されるまでの間、Aさん(母)が2分の1、Bさん(長男)が4分の1、Cさん(長女)が4分1の持分で、遺産を共有していることになります。

 

 

不動産の共有の問題点

一般的に、不動産の共有を継続することはおすすめできません。

これは、以下のような問題があるからです。

感情的な対立が生ずるおそれがある

現時点において問題がなくても、将来的に親族間でトラブルがあった場合、感情的な対立が生ずる危険があります。

その場合、例えば、当該不動産を処分したくなっても処分できないなどの弊害が考えられます。

数次相続発生時に複雑化する
例えば、Bさん(長男)がいつか死亡した時、相続が発生します。

長男の相続人が3人(妻と子供二人)がいる場合、その3人も共有持分を有することとなります。

共有持分を有するものが増加することで、当該不動産の管理が大変になる等の弊害が考えられます。

上記のような問題があるため、不動産の相続においては、基本的には以下の方法をおすすめしています。

相続人独りの単独所有
例えば、マンションをBさん(長男)が単独所有し、その代償金としてAさん(妻)とCさん(長女)に金銭を支払う方法です。

当該不動産を売却する
電卓と通帳マンションを売却し、余剰金(売却金額から売却に要した仲介手数料等を控除)を相続分に応じて分ける方法です。

 

不動産を共有しても良い場合

会社本件では、マンションの時価が高額(3500万円)ですが、預貯金等その他の遺産は多くありません。

このようなケースでは、マンションを相続人の独りが単独所有した場合、多額の代償金を支払う必要があります。

また、不動産の賃料収入が高く、売却よりも賃料収入の方が魅力があるケースもあります。

このようなケースで、かつ、親族間の関係が良好で、将来の対立が想定されないような場合は、マンションを共有とすることが適切と言えます。

その場合の共有持分の割合については、決まりはありませんが、遺産が当該マンションだけであれば、法定相続分に準じることは合理的であり、協議がまとまりやすいと考えられます。

当該マンション以外にも遺産がある場合は、それらを誰がどの程度取得するのかなどの具体的な事情を考慮して、全体として法定相続分程度になるよう調整するとよいでしょう。

 

 

遺産分割協議書の記載例

では、具体的に、どのような遺産分割協議書を作成すればよいのか、以下では今回のケースの例を示します。

【マンションを共有して賃料を取得する場合の遺産分割協議書】

第◯条

Aは、別紙遺産目録1記載の不動産(以下「自宅不動産」という。)を取得する。

第◯条

A、B及びCは、別紙遺産目録2記載の不動産(以下「本件マンション」という。)を共有(Aの持分2分の1・Bの持分4分の1・Cの持分4分の1)により取得する。

第◯条

A、B及びCは、本件マンションについて本日から5年間、共有物の分割をしないことを合意する。

第◯条

次の預金は、Bが取得する。

◯◯銀行 ◯◯支店 普通 口座番号◯◯◯◯  1000万円(相続開始日の残高)

第○条

次の預金は、Cが取得する。

◯◯銀行 ◯◯支店 普通 口座番号◯◯◯◯  1000万円(相続開始日の残高)

遺産分割協議の書式のダウンロードは「遺産分割書式集」からどうぞ。

 

弁護士上記の遺産分割協議書のポイントは、共有物の分割請求を制限していることです。

遺産分割協議が成立しても、法的には共有物分割請求が可能です(民法256条1項)。

せっかく、遺産分割協議書を作成しても、すぐに共有物の分割請求がされてしまうと意味がありません。

そこで、上記のサンプルでは、共有物の分割請求を5年間行使できない旨定めています。

なお、共有物の分割請求は5年以下であれば認められています(同条項)。

 

不動産を共有する遺産分割協議の問題点

遺産に不動産があるケースの遺産分割協議には、以下のような問題点が考えられます。

不動産の時価算定は困難!?

税のイメージ画像本ケースでは、自宅不動産の価値を1000万円、マンションの時価を3500万円と決めつけていましたが、実務では、この価額をめぐって争いとなります。

なぜならば、不動産の時価は、固定資産税の評価額や相続税の評価額とは異なり、確定していないため「評価」が必要となるからです。

また、自宅不動産に関しては、これを取得する側(相談事例だとAさん)にとっては、安いほうがメリットがあり、その他の相続人にとっては高いほうが代償金の額が高くなるというメリットがあるため、利害衝突が起こる可能性があります。

 

遺産分割協議書の作成は簡単ではない!?

弁護士本村安宏遺産分割協議書は、後々のトラブル防止のために、適切な内容のものを作成すべきです。

素人判断で適当に作成すると、法的有効性を欠き、後日トラブルとなって、不利益を被るということも考えられます。

そのため、遺産分割協議書作成については、相続問題に詳しい弁護士にご相談の上、進めていかれることをおすすめします。

遺産分割については、こちらもごらんください。

 

 

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