遺産分割が未了のまま、申告をしないとどのような不利益がある?

相続税

相続税についての質問です。

私は、亡くなった夫Aの配偶者で、Aとの間に子どものBとCがおり、相続人は私と子どもの二人だけです。

私は、BとCとは仲が悪くないのですが、BとCが仲が悪く、遺産分割の手続がなかなか進まず、Aの死亡から10か月が過ぎようとしており、相続税の申告をすべきか迷っています。

私は相続人全員でとりあえず相続税の申告をしようと言っているのですが、BとCはお互いにいがみ合って相続税の申告を共同ですることもできなさそうです。

この状態であれば、相続税の申告をせずに税務署から言われてからでもいいかと思っているのですが、その場合の不利益などについて教えてください。

 

 

 

もし申告期限内に相続税の申告をしなかった場合には、以下のような不利益があります。

① 期限後申告により納付すべき相続税額の5~20%に相当する金額の無申告加算税が課せられます。
② 納付が遅れたことになりますので、延滞税が課せられます。
③ 配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例といった税額を軽減する特例の適用を受けることができなくなります。

弁護士入野田智也これらの不利益はとても大きく、しっかりと申告をしておけば③の特例の適用により相続税を支払う必要がなかったものが、相続税を支払う必要が生じるだけではなく、①の無申告加算税や②の延滞税などが課され、余計な税金を支払うことにもなりかねません。

なお、場合によっては、重加算税が課される可能性もあり、その場合に課される額は納付すべき相続税額の40%もの金額になります。

相続税の申告

※申告期限
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内と定められており、基本的には被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内ということになります。

相続税の申告については、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。

遺産分割が未了の場合であっても、この申告期限は変わらず、その場合には遺産を法定相続分で分割したものと仮定してとりあえず相続税の申告をすることになります。

もし他の相続人と共同で申告ができない場合には、単独でも申告はできますので、事後的に特例を受けるために「3年以内の分割見込書」というものを作成して合わせて提出しておくのが良いでしょう。

期限後でも税務署長から相続税の決定通知があるまでは、相続税の申告ができ、これを「期限後申告」と呼んでいます。

基本的にこの申告期限は延ばせませんので、とりあえず後述の方法で相続税の申告をしておくべきです。

 

 

期限後申告の場合の不利益

不利益① 加算税

期限後申告の場合の不利益は様々ですが、ここでは①無申告加算税、②延滞税、③重加算税の3つについて解説をしていきたいと思います。

無申告加算税

まず、相続税の計算をして相続税の申告が必要にもかかわらず、その申告をしない場合には、無申告ということになりますので、無申告加算税がかかってきます。

無申告加算税は、期限後申告により納付すべき相続税額に一定の割合をかけたものですが、税務調査の通知前の自主的な申告には5%など、20%まで細かく決まっています。

期限後、税務調査の通知前に自主的に申告をした場合 ・・・ 5%

期限後、税務調査の通知後に自主的に申告をした場合 ・・・ 10%
(ただし、50万円を超える部分については15%)

期限後、税務調査があり決定があることを予知して申告をした場合 ・・・ 15%
(ただし、50万円を超える部分については20%)

延滞税

無申告加算税だけではなく、税金を納付していないことにより延滞税も課されることになります。

延滞税は、下記のとおり毎年その割合が決まっており、その期間によって延滞税がかわってきます。

納期限の翌日から2月を経過する日まで
2018年1月1日から2019年12月31日までの期間は、年2.6%
2017年1月1日から2017年12月31日までの期間は、年2.7%
納期限の翌日から2月を経過した日以後
2018年1月1日から2019年12月31日までの期間は、年8.9%
2017年1月1日から2017年12月31日までの期間は、年9.0%

重加算税

もし無申告なだけではなく、仮想隠蔽を行っていた場合には、重加算税が課されます。

仮想隠蔽というのは、故意に書類の改ざん等を行っていた場合ですので、通常は該当しないものと思われます。

 

不利益② 配偶者の税額軽減等の適用ができないこと

相続税の申告期限内に遺産分割が終わっていない場合

相続税には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など(以下、「特例等」とします)、減税のための措置が規定されていますが、それらの特例等を用いるためには、期限内の申告時に特例等を用いることの書類を出さなければならないことになっています。

もっとも、遺産分割が終わっていない場合には特例等を適用することができないとなっています。

しかし、遺産分割が終わっていないだけで特例等が用いることができないのは不合理ですから、とりあえず法定相続分で相続したものと仮定して申告をして相続税を納付し、同時に「3年以内の分割見込書」というものを提出することで、申告期限から3年間の間に遺産分割が完了すれば特例等を受けられるということになっています。

申告期限から3年以内に遺産分割ができなかった場合

申告期限から3年以内に遺産分割が終わらなかった場合にも、それだけで特例等を受けられないわけではなく、3年を経過しても遺産分割ができないやむを得ない事情があれば、税務署長の承認を受けた場合で、その事情が消滅した日の翌日から4ヶ月以内の遺産分割がなされれば、特例等を受けられることになっています。

上記のやむを得ない事情とは、遺産分割の調停や相続に関する訴えなどが係属している場合で、裁判所を用いた手続き中である場合には、このやむを得ない事情に該当すると思って良いでしょう。

期限後に特例等を受けるためには

相続税の申告期限後に特例等を受けるためには、まず期限内の申告をすることが必要になり、それに加え、遺産分割が完了した後、その遺産分割の成立日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をして、支払い済みの相続税の還付請求をすることになります。

遺産分割が終わっても自動的に税金が還付されることはないので、しっかりと手続きをしましょう。

遺産分割が終わっている場合

上記の説明は、遺産分割が申告期限内に終わっていない場合です。

期限内に遺産分割ができている場合には、期限後でも3年以内であれば特例等の適用は受けられることになっており、あくまで期限内に遺産分割がまとまっていない場合に期限内申告をしておかないと特例等が受けられなくなるということなのです。

その点は、一応注意が必要かもしれませんが、遺産分割が終わっていれば相続税の申告をすれば良いだけなので、通常は問題にならないというのが実情のようです。

なお、よく勘違いされているところですが、特例等は申告をしないと適用されませんので、特例等を用いた後の額が基礎控除内だとしても申告はしてください。

 

 

まとめ

相続にあたっては、遺産の分割だけではなく、相続税のことも気にしないといけません。

相続が開始して遺産分割の協議を始めて、その後少し争いになるだけですぐに申告期限は過ぎます。

弁護士と税理士当事務所でも、相続の事案は平均して受任から1年程度はかかっており、申告期限内の解決ができるものが半数あるかどうかといったところです。

もちろん速やかに解決できるのが望ましいですが、どうしても時間がかかることはありますので、相続税の申告が迫ってきた場合には、一人で悩むのではなく、しっかりと税務にも詳しい弁護士や税理士と話し合って準備を進めていくべきです。

 

 

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