生前にもらった建物が地震で倒壊しても、特別受益になりますか?

特別受益

掲載日:2019年9月18日|最終更新日:2019年9月18日

すでに滅失している特別受益について質問です。

私Cは、先日父のAが亡くなり、姉のBと共に相続人となりました。

Aの遺産は、預貯金1000万円だけが残っているのですが、Bと遺産分割の協議をしたところ、Bは、私がAの生前にAからもらった当時1000万円の価値のマンションのことを指摘し、「すでにあなたは1000万円のマンションをもらっているのだから、今回の遺産からもらうべきではない」と言ってきました。

確かに、Aからもらったマンションに長年住んでいたので、そのことは考慮しても良いかと思っていますが、数年前の大地震でマンションは倒壊してしまい、すでにマンションはありません。

すでに滅失したマンションでも、特別受益に該当し、私は遺産分割で何も取得できないことになるのでしょうか。

おしえてください。

滅失したマンションだとしても、生前贈与により何らの対価なくAさんからもらったのであれば、特別受益に該当すると言えます。

もっとも、特別受益に該当するとは言っても、その評価は別に考えなければなりません。

特別受益の評価の基準時は、相続開始時、つまりは被相続人の死亡時とされていますので、死亡時に特別受益の対象物が不可抗力によって滅失していた場合には、そもそもその物自体が存在しませんので、価値0ということになります。

そのため、Cさんには特別受益が0ということになり、法定相続分で分けるとすれば、1000万円の預貯金をBさんと半分ずつ分けることになります。

 

特別受益の評価基準時

特別受益とは、ひらたくいえば被相続人から相続人が受けた生前贈与のことですが、遺産分割にあたっては、特別受益を遺産に持ち戻して計算がされます。

この持ち戻す金額については、特別受益の額となるのですが、その額を評価する基準時をどこにするかで評価額はだいぶ変わってきます。

評価基準時としては、贈与時と相続開始時、遺産分割時が考えられますが、実務では相続開始時とされております。

そのため、贈与の対象財産が物である場合には多くの場合には、価値が落ちており、相続開始時の評価は下がっていることが多いといえます。

 

▼特別受益について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

贈与の対象財産が滅失していた場合はどうか

では、贈与の対象財産が滅失していた場合の評価はどうなるのでしょうか。

贈与時に1000万円のものをもらって、その物が現在滅失しているからと言って、特別受益の評価として0というのは少し不公平であるように思われます。

そのため、相続開始時を基準としつつも、滅失の理由によって扱いを分けているのが実務といえます。

 

滅失が不可抗力による場合

滅失が災害等の不可抗力による場合には、もらった相続人にとってもどうしようもないことであり、贈与を受けた人の手元にも財産が残っていないわけですから、その評価額は0と考えざるを得ません

贈与を受けた人の行為によって滅失した場合

贈与を受けた人が、その物を失くしたり、焼失させてしまったような場合には、贈与を受けた人の責任ですので、その場合にまで特別受益の評価額を0にすることは妥当ではありません。

自然に消滅した場合

長年の経過により、贈与を受けた物が自然に朽ちるなどして滅失することもあります。
この場合、贈与を受けた人は、その物の効用をすべて得てきたわけですから、物が滅失したからと言って、特別受益の評価額を0とすることは妥当ではありません。
そのため、贈与者が受けた利益を評価し、その評価額を相続開始時の評価額とすることが考えられるものと思われます。
もっとも、現実には受益の額を評価するのは困難といえるでしょうから、協議によって決めるか、審判官の裁量により決めるほかないように思われます。

 

 

本件では

本件では、Cさんが生前にAさんからもらったマンションをどのように評価するかによって、Cさんが相続開始時に残っていた預貯金をどの程度もらうことができるかが変わってきます。

なお、マンションの贈与が特別受益に該当することは前提としております。

仮に、贈与時の価額を基準とすると、マンションは1000万円だったということですから、預貯金 1000万円とマンション 1000万円を合計して 2000万円のみなし相続財産があることになり、BさんとCさんは 1000万円ずつもらうべきということになります。

しかし、Cさんはすでに 1000万円のマンションをもらっていますので、遺産分割では何も取得できないということになります。

この結論は、マンションが不可抗力で滅失しているCさんにとっては酷と言えます。

そのため、実務では、贈与時ではなく相続開始時を基準として評価することになっており、前述のとおり、不可抗力での対象財産の滅失については、大地震という不可抗力に基づくものであり、相続開始時に0という評価をすることになりますから、 Cさんの受けた特別受益は0ということになります。

 

▼特別受益の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

特別受益の評価の難しさ

今回の解説では、評価額の基準時の争いについてのものでしたが、現実の争いにおいてはそもそも基準時における評価額自体が争いになることが多いです。

特に、不動産はその価値の算定が難しく、査定などをしても業者によって開きが出ることがほとんどで、売却でもしない限りは評価を客観的にすることは困難です。

しかし、遺産分割の協議で評価額が決まらない場合には、最終的に審判で決まることになりますから、その際には裁判所の指定した鑑定人による鑑定をして評価額に決着をつけることになります。

鑑定人を用いると時間も費用も掛かりますから、まずは協議や調停において遺産や特別受益の評価額の合意をとれるように努力すべきでしょう。

 

▼特別受益の評価額について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

相続は、特別受益をはじめとして争いが多岐にわたる分野です。

そのため、手続きなども複雑になりやすく、相続に精通した専門家の関与が不可欠な分野と言えます。

一人で悩まずに、まずは、専門家である弁護士にご相談をしてください。

 

▼ご相談の流れについてはこちらをご覧ください。

 

 


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