包括遺贈をされた場合、相続放棄をしても借金を返さないといけないのですか?

相続放棄

掲載日:2019年7月24日|最終更新日:2019年7月24日

相続放棄についての質問です。

先日、父が亡くなり、私A、兄のBの2人が相続人となりました。

しかし、父は遺言を残しており、「Bには生前に十分な贈与をしたので、私の遺産はすべてAに遺贈する」と書いてありました。

父の気持ちは嬉しかったのですが、父は死ぬ数年前から難病にかかり、様々な治療を試して医療費がかさんで債務超過の状態にありました。

そのため、実家の土地建物を手放すのは躊躇われましたが、Bと相談の上、二人で相続放棄をすることにしました。

しかし、相続放棄後1年が経過して、ある債権者Cから弁護士を通じて連絡があり、父の借金を返せと言ってきました。

私は、相続放棄をしたことの証明書を見せたのですが、Cの弁護士からは、「遺言により包括遺贈がされていると聞いているが、その放棄はしたのか。していないなら、債務はあなたが負うことになる。」と言われました。

相続放棄をしたのに債務を負うことがありうるのでしょうか。

 

包括遺贈を受けた場合には、相続人の地位だけではなく、包括受遺者の地位があります。

包括受遺者は、遺言者の権利義務の一切を承継することになります。

そのため、相続放棄をしても、包括遺贈の放棄をしなければ、債務を免れることは出来ません。

包括遺贈の放棄の手続については、相続放棄の手続とほぼ同じであり、原則として、自分が受遺者であることを知ってから3ヶ月以内に放棄の申述をしなければなりませんので、すでに包括遺贈を知ってから1年以上が経過している以上、Aさんは包括遺贈の放棄をできなということになります。

ただし、今回通知をしてきた債権者Cさんについては知らず、その債権者がいることを知っていれば包括遺贈も放棄していたと言えるのであれば、放棄の申述が受理される可能性は0ではありません。

包括遺贈とは

包括遺贈というのは、遺言者が遺産の全部又は一部を、その割合を示して遺贈することであり、全部包括遺贈と割合的包括遺贈の2つがあります。

全部包括遺贈でも割合的包括遺贈であっても、包括遺贈は、遺贈の効力発生によって権利義務を受遺者に承継させることになり、相続人以外の人でも相続人とほぼ同様の地位に置かれることになります。

つまり、財産を承継するだけではなく、借金などの債務も引き継ぐことになります。

包括遺贈をされた場合、その遺贈について放棄しようとすると、相続放棄と同じ手続きが必要になります。

▼遺贈の放棄について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

包括受遺者と相続人の地位の併存

包括遺贈が相続人になされた場合、その相続人は相続人の地位を失うわけではないので、相続人の地位と包括受遺者の地位を併存させることになります。

そして、包括受遺者は、相続人と同様、放棄、単純承認、限定承認などができ、そのためには相続人と同様の手続きを必要とします。

そのため、包括遺贈の放棄の手続きは、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述をしなければならず、相続人に対しての口頭や書面での放棄をすることはできないことになっています。

併存した地位を有している場合、相続の放棄をしたとしても、包括遺贈の放棄には影響せず、逆に包括遺贈の放棄をしても相続放棄をしたことにはなりません。

そのため、被相続人の債務超過で相続放棄をしようとする場合、包括遺贈の放棄もしなければ債務を承継することになってしまいます。

 

 

本件では

本件では、Aさんは遺言者より全部包括遺贈を受けており、相続人としての地位と包括受遺者の地位の両方を有していることになります。

そして、Aさんは相続放棄の申述をしたようですが、一方、包括遺贈については放棄の手続きをしていません。

そのため、包括受遺者の地位は放棄していないことになります。

前述のとおり、包括受遺者はその割合に応じて債務を負うことになりますので、全部包括遺贈されたAさんは、被相続人の債務をすべて負うことになります。

そのため、Cさんからの債務について支払いをしなければならないのです。

 

 

包括遺贈の放棄をしていなかった場合にはどうしたらよいか

それでは、遺贈があったことを知った時から3ヶ月を経過している場合には、包括遺贈の放棄はできないのでしょうか。

確かに、包括遺贈の放棄については、遺贈を知った時から3ヶ月以内に放棄の申述をしなければならないのが原則です。

しかし、相続放棄の場合と同様に、申述期間は「相続の開始があったことを知った時」から起算するため、新たな債権者が現れた場合には、その債権者からの通知が来た時点から3ヶ月以内であれば放棄の申述が受理される可能性はあります。

そのため、放棄の受理がされるかはわかりませんが、諦めずに放棄の申述をしてみるというのはあり得る選択肢でしょう。

 

 

まとめ

弁護士相談相続の放棄についてはある程度ネットなどに情報があり、3ヶ月以内の申述期間に申述をしなければならないということが一般の方にも知られているようになっていると思います。

しかし、包括受遺者になった場合についてはあまり一般の方に知られていないだけではなく、相続分野にあまり精通していない弁護士は知らない人もいるところです。

そのため、相続放棄をすればいいと思って、包括遺贈について放棄をしない例もあるようです。

しかし、そのような場合には、後々債権者から指摘を受けてその事実を知ったり、相続財産管理人の選任を申し立てようとして、裁判所から指摘されることになるようです。

このような事態に至ると、多額の債務を負うことになってしまうので、遺贈を受けた場合には、まずは相続に詳しい弁護士にご相談ください。

 

▼当事務所のご相談の流れについては、こちらのページをご覧ください。

 


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