預貯金から受けた払い戻しは遺産分割でどのように扱われる?

相続

預貯金からの払い戻しは遺産分割での扱いについての質問です。

私Aは、兄Bと、令和元年9月に亡くなった父の遺産分割の協議をしていたのですが、Bは「銀行から150万円の払い戻しを受けている」と言ってきました。

私は、Bに対し、なぜ相談もなく150万円を払い戻したのかと尋ねたのですが、正規の手続きを経たと言っています。私に無断でそのような払い戻しが可能なのでしょうか。

私は、Bは結婚の際に父から1000万円をもらったと聞いたことがあり、すでにお金をたくさんもらっているBが150万円を取得していることに納得がいきませんが、Bが払い戻しを受けた150万円は、遺産分割でどのように扱われるのでしょうか。

なお、相続人は私とBだけで、遺産は死亡時の預貯金1000万円だけでした。

 

 

まず、Bは、亡くなった父親が口座を有していた金融機関から一定額の払い戻しを受けることができる権利が民法に定められており、その権利に基づいて150万円の払い戻しを受けたものと思われます。

この場合、遺産分割の中では、Bが払い戻しを受けた150万円をBが遺産の中から先に取得したものとして扱うことになります。

しかし、仮にBが1000万円の生前贈与を受け取っているとすると、その金銭が特別受益と判断され、実際にはBがもらいすぎの状態になってしまう可能性があります。

その場合には、BからAに対して150万円を返還してもらうということになりますが、その回収のリスクはAが負うことになります。

遺産である預貯金からの払い戻し

払い戻しの請求が可能かどうか

通帳と印鑑とお金亡くなった方の名義の預貯金債権は、相続人が準共有状態となるという判例があり、相続人が複数いる場合には、ATMで勝手に引き出すことは別として、相続人の1人が窓口で勝手に解約したり払い戻しを受けることはできませんでした。

しかし、亡くなった方の口座で生活資金を管理しており、その口座から払い戻し等を受けられないとすると、遺された配偶者などの遺族が生活できないなどの不都合が生じていたことから、これに対処するものとして、平成30年の民法改正により一定額の払い戻しの請求権を相続人が行使できるものと定められました。

つまり、本件でも、相続人のBは、Aの同意をすることなく銀行に父の預貯金を一定額払い戻すように請求できることになるのです。

 

払い戻し可能額

払い戻しを請求できる額は、「相続開始のときの預貯金債権の額の3分の1×払い戻しを求める相続人の法定相続分」の額です。

そして、その上限額は 150万円と定められております。

つまり、本件でBの払い戻しが受けられる額は、以下のようになります。

預貯金債権の額 1000万円 × 3分の1 × 法定相続分 2分の1 ≒ 166万 >150万円

上限額である 150万円の払い戻しを受けられることになります。

 

 

遺産分割での後処理

六法と時計上記の払い戻しを受けた場合、その後遺産分割をするにあたっては、払い戻しを受けた額を遺産の一部分割として、すでに取得しているものとして扱うことになります。

もっとも、特別受益がある場合には、話はややこしくなります。

特別受益がある場合には、現実にはBが遺産分割では取得できないはずの払戻金を取得してしまうことがあるからです。

このことを理解するためには、Bに特別受益がある場合とない場合を考えればわかりやすいかと思いますので、以下では分けて説明していきます。

特別受益については、こちらからどうぞ。

 

特別受益がない場合

AにもBにも特別受益がない場合には、遺産は 1000万円の預貯金債権ということになりますので、法定相続分 2分の1ずつ分けると、AとBそれぞれが 500万円ずつ分けるのが通常です。

この場合、Bはすでに 150万円を取得していますから、Aが残りの預貯金 850万円から 500万円を取得し、Bが残りの 350万円を取得することになりますが、特に不都合は生じません。

 

特別受益がある場合

Aには特別受益はないが、Bに 1000万円の特別受益がある場合には、遺産の預貯金債権 1000万円だけではなく、特別受益 1000万円を持ち戻して、2000万円のみなし相続財産があることになり、AとBは法定相続分である 2分の1ずつで、それぞれ 1000万円ずつを取得すべきということになります。

しかし、Bはすでに 1000万円の特別受益を受けていますから、遺産から取得すべき額である具体的相続分は 0です。

それにもかかわらず、遺産から一部分割としてBは 150万円を受け取ってしまっていますから、これを調整するために、Aが残りの 850万円の預貯金債権を取得し、150万円についてはBがAに対して代償金として支払うという処理になります。

注意点

上記のとおり、特別受益がある場合には、すでに受けた払い戻し額を他の相続人に支払わなければならない可能性があります。

逆に言えば、AはBに対して 150万円を請求し回収しなければならず、Bがお金のない人であれば、金銭を回収できないという可能性もありえるので、その回収リスクを負うことになります。

このような事態が生じることは、遺産分割前の払戻請求権を認めたことにより当然生じるものであり、想定されていたことですが、この不都合を最小化するために、150万円の上限額を定めたものと言われています。

 

 

まとめ

弁護士上記で説明したように改正によって認められた払戻請求権によって、相続人の1人が払い戻しを受けることができるようになりましたが、一方で、これらの正規の手続によらない方法により、被相続人の預貯金を無断で引き出している場合は少なくありません。

その様な場合に対処するために、民法改正により他の規律も定められており、相続における預貯金の扱いというのはとても難しい問題となっています。

相続は手続的にも難しいことが多いので、まずは相続を専門とする弁護士に相談をすることをおすすめします。

 

 


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