被相続人からお小遣いや生活費をもらっていたが、特別寄与料は認められる?

寄与分

掲載日:2019年6月24日|最終更新日:2019年6月24日

被相続人からお小遣いや生活費をもらっていた場合の特別寄与についての質問です。

令和元年10月に配偶者の父Aが亡くなったのですが、Aの強い希望で私と配偶者が住み込みで長年Aの身の回りの世話を続けてきました。

Aは介護度5で寝たきりだったので、施設に入れたほうがいいと言われていたのですが、Aの希望で私が療養看護をして自宅で最後まで生活していたのです。

Aが亡くなった後、相続人に対して特別寄与料を請求したところ 相続人の一人であるBから「特別寄与料は、無償で労務を提供した人が認められるもので、お前はAや私からお小遣いなど金銭をもらっていたのだから特別寄与料の請求はできない。」と言われてしまいました。

確かに、Aは、生前から私のことを可愛がってくれ、Aからは毎月お小遣いをもらったり、毎月の生活費の援助もしてもらっていましたし、Bからも義父の世話をした御礼と言われてお金をもらったこともありました。

しかし、それによって特別寄与料をもらえないことになるのでしょうか。

教えてください。

特別寄与料を請求するためには、請求権者の貢献が「無償」でおこなわれたことが必要ですが、金銭を受け取っていたことをもって直ちに「無償性」が否定されるわけではありません。

個別的な事情から、相談者さんのもらった金銭が労務提供の対価といえるかを検討して、対価とまで言える場合には「無償」という要件は満たさないことになります。

本件の場合

本件では、相談者さんがAさんからもらっていた金額や労務提供の内容、被相続人と寄与者の認識などを考慮して判断されることになりますので、個別的な事情を検討する必要がありますが、Aの強い希望で住み込みで世話をした事情からすると、生活費や少しのお小遣いなどの類では無償性が否定されない可能性が高いものと思われます。

また、A以外の相続人から受け取った金銭についても同様の検討が必要ですが、基本的には「労務提供の対価」とはいえないことが多いと思われます。

もっとも、特別寄与料の要件は満たしたとしても、被相続人からもらっていた金銭が特別寄与料の算定上考慮される可能性はあるので、その点は注意が必要です。

相続において療養看護に努めた人の労力は考慮されるのか

車椅子平成30年の民法改正により、令和元年7月1日以降に開始した相続については、特別寄与料の請求の制度を創設し、被相続人の親族が一定の場合に相続人に請求できる権利が生じることになりました。

この制度の要件として「無償で」労務提供をしたことが求められていますので、この無償という要件の範囲について解説していきたいと思います。

 

 

特別寄与料制度にいう「無償」とは?

前述のとおり、特別寄与料が認められるためには「無償」であることが必要であるとされていますが、寄与分でも同じ規定がありますので、寄与分の裁判例も参考になるものと思われます。

まず、「無償」という言葉を文言通りに解釈すると、1円でももらっていれば特別寄与料の請求権はないということになりそうです。

「無償」という要件を設けた趣旨
「有償」で療養看護などをしている人に対してはすでに被相続人は対価を支払っているのであるから、被相続人としてもそれ以上に寄与者に支払う意思を持っていないであろうという考慮が働いたものです。

そのため、「無償」かどうかの判断にあたっては、個別的な事情を勘案して、療養看護等の労務提供の対価と言えるかどうかを被相続人の認識を含めて検討すべきといえます。

 

 

お小遣いや生活費は「対価」といえるか?

それでは、療養看護等をした人に対して被相続人がお小遣いや生活費をあげていた場合には、それを労務提供の対価と言えるでしょうか。

お小遣いについて

お小遣いお小遣いについては、労務提供の態様とお小遣いの額など個別の事情によりますが、月に数千円や1~2万円程度では、「無償性」を否定するものではないといえるのが通常でしょう。

被相続人や特別寄与者の認識としても対価として捉えていないと認定できるのであればなおさら対価ということはいえないものと思われます。

 

生活費について

生活費についてはどうでしょうか。

住居費や光熱費がかかっていないという場合は?

被相続人が望んで住み込みをしてもらった等の事情がある場合には、そもそも住み込み自体にかかる費用は被相続人が負担すべきものですから、特別寄与者に対する労務の提供の対価ということはできないでしょう。このことは、生活に伴う日用品や食事代を負担している場合も同様と言えます。

金額が労務の提供に対して相当に高額で、社会通念上は対価と言える様な場合は?

もっとも、生活費にしてもお小遣いにしてもその額が労務の提供に対して相当に高額であったり、社会通念上は対価と言える様な場合はあると思われます。このような判断にあたっては、労務を外部に依頼した場合や施設に入れた場合などと比較して検討することもあるかと思いますが、専門家が業務として行った労務と親族が提供した労務を単純に比較することは無理がありますので、一参考程度にとどめるべきです。

 

寄与料の算定上考慮されることはあり得る

裁判もっとも、特別寄与料を家庭裁判所が決める場合には、その寄与料の算定にあたり、考慮すべき「一切の事情」として被相続人から得ていた金銭を考慮に入れることはあり得るものと思われます。

その場合、単純にもらっていた額を特別寄与料の算定から控除するわけではなく、もらっていた額を考慮して妥当な控除金額を裁判官が決めることになると思われます。

 

 

相続人からもらっていた金銭は特別寄与料の無償性を否定するものになるか

弁護士被相続人ではなく、相続人から金銭を受け取っていた場合についてですが、前述の趣旨からすれば、相続人から金銭の提供を受けていてもそれが労務の提供の対価と言えなければ、無償性は否定されません。

基本的には、相続人の支払った金銭によって「無償で」の要件が否定されることは少ないと言えると思います。

もっとも、特別寄与料自体は認められるとして、その寄与料の算定にあたっては「一切の事情」が考慮されることになっていますから、その一事情として考慮されることはあり得るものと思われます。

 

 

まとめ

六法全書と弁護士バッジ特別寄与料の制度は、平成30年民法改正により取り入れられた制度であり、まだまだ裁判例や実務が固まっていない分野です。

そのため、実務家にとっても未知の分野と言え、弁護士であっても判断が難しいものです。

もっとも、その判断にあたっては寄与分の制度で培われた実務の運用を参考にすることはでき、一定の判断をすることはできるといえます。

かなり専門的な判断が必要になる分野ですので、1人で悩まずに、まずは専門家である弁護士に相談してください。

 

 

 


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