兄が、父の自筆証書遺言の検認をせずに10年間放置していたのですが、相続欠格になりませんか?

遺言書

掲載日:2019年6月14日|最終更新日:2019年6月14日

相続欠格についての質問です。

父が10年以上前に死亡し、相続人は私Aと兄だけでした。

父には預貯金はなく、不動産ばかりが残っていたのですが、私は早めに名義を変えたほうがいいと兄に言っても、「今は忙しいから今度にしよう、別に不動産なんだからゆっくりすればいい」と言われて、私も途中で名義を変えるのは諦めてしまいました。

父の相続について何ら手続をしないまま、父の死亡から10年が経って親族で集まったのですが、その際に兄から、「実は父から保管を任せられた自筆の遺言がある」と聞かされ、その後その遺言の検認の手続をとりました。

なお、兄は遺言の内容を父の死亡前から知っていたようです。

遺言には、「父の遺産はすべて長男である兄に相続させる」ということが書いてあり、「Aは遺留分の請求はしないように」とも書いてありました。

私は、納得できずに兄に対して遺留分の請求をしたのですが、兄は、「父が死んでからすでに10年が経っており、Aの遺留分の請求は認められない」と言ってきました。確かに、調べると10年の間に遺留分の請求をしなければならないようでしたが、そもそも遺言を知らなかったので、遺留分の請求をしようがありませんでした。

兄の行為を許すことができないのですが、検認もせずに自筆証書遺言を10年間放置していた兄の相続人の資格を失わせることはできないでしょうか。

弁護士入野田智也結論として、お兄様は相続欠格となり、相続人としての地位を失うことになりますので、遺言があったとしても、すべての遺産はAさんが取得できるものと思われます。

お兄様は、Aさんの自筆証書遺言の存在を知りながら、その検認もせず、10年間放置していたため、「遺言書を隠匿した」といえますし、その動機・目的は、Aさんの遺留分の請求を回避するためであったといえそうですので、相続欠格事由に該当し、お兄様は相続人の地位を失うものと思われます。

 

 

相続欠格とは

弁護士相続欠格とは、一定の重大な事由が存在するために、相続人の資格自体を失うというものです。

その事由は、被相続人を死に至らしめたことや、遺言書を勝手に破棄したことなどであり、一般的にもそのような人を相続人とするのは妥当ではないと考えられる事由が並んでいます。

相続欠格となった場合の効果としては、相続人としての地位を失うのですから、相続権が無くなるということです。

遺言によって受遺者になっていたとしても、受遺者としての地位も失うものとされています。

 

▼相続欠格について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

遺言書を隠匿した場合の欠格

民法891条5号では、相続欠格の事由として「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」が掲げられており、遺言の存在を知らせなかったことが「隠匿」に該当するのではないかということが、しばしば問題となっています。

まず、遺言書を隠匿したというのは、「遺言書の発見を妨げるような状態に置くこと」と理解されていますが、自筆証書遺言の検認をしなかったことは、隠匿にあたるのでしょうか。

 

自筆証書遺言の検認手続きと隠匿

通帳と印鑑とお金自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認の手続をしなければならないことになっており、これを怠って、遺言を開封したり執行した場合には、5万円の過料が課されるものとされています。

しかし、過料が課されることはほとんどありませんし、現実には検認の手続を知らずに遺言書をそのまま開けてしまうこともしばしばあります。

もっとも、この検認をあえてせずに、何年も放置しておくということは、他の相続人に遺言書の存在を知らせないということであって、遺言書の発見を妨げているといえますので、相続欠格事由に言う「隠匿」に該当するものと思われます。

なお、遺言書の存在が他の相続人にも知れており、写しを交付しているような場合には、検認の手続をしないとしても、隠匿行為とまではいえないという裁判例がありますので、検認をしない事=隠匿とはならないことには注意が必要です。

 

▼遺言書の偽造・隠匿について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

隠匿には二重の故意が必要

相続欠格事由には、二重の故意が必要と言われており、行為の認識だけではなく、「相続に関して不当な利益を得ようとする動機・目的」が必要と言われています。

これは、もう少しわかりやすく言うと、相続において、自らに有利な結果を得ようとしたり、自らに不利な結果を回避しようとする目的と言われています。

この動機目的の典型例は、遺留分の請求を避け、時効にかからせるという目的であり、まさに本件がそれに当てはまります。

 

本件では

本件では、お父様から保管を任せられたお兄様が、その内容を知りながら、あえて10年以上もの間遺言書の存在を伝えず、検認手続きもしなかったということですから、その事実を相続欠格事由の「隠匿」と解することができます。

そして、遺言の検認をすればAさんから遺留分の請求をされるので、そのことを回避する目的で隠匿をしたものといえるでしょう。

そうすると、隠匿について二重の故意があったと言えますから、相続欠格事由に該当し、お兄様は相続人としての地位を失うことになります。

 

 

まとめ

遺言書遺言はしばしば紛争にならないように作成すると言われてきますが、遺言がむしろ紛争の種になることはしばしばあります。

遺言を作成する際には、その遺言が適切かつ早期に相続人に開示され、その執行がなされるように準備しておくべきでしょう。

そのためには、相続人ではなく、弁護士や第三者が遺言執行者となるのが良いと思われ、そうすることで、紛争の激化を回避し、早期に相続の手続きを終えることができます。

遺言を作成する際には、ある程度費用がかかったとしても、公正証書遺言を作成し、遺言執行者を決めることがおすすめです。

遺言書作成のための準備は1人でするのではなく、まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

 

▼遺言書について、詳しくはこちらをご覧ください。

 


[ 相続Q&A一覧に戻る ]


 

相続発生後のお悩み解決法



なぜ弁護士に相談すべき?