遺留分の請求をしたのに、遺言執行者が執行を中止しないのですが、どうしたら良いですか?

遺言執行者

掲載日:2019年6月14日|最終更新日:2019年6月14日

書類父のAが死亡し、相続人は長男のBと二男である私Cだけです。

Aは遺言を遺しており、遺言には、長男のBにすべての遺産を遺贈する、この遺言の執行者としてDを指定する、と書いてありました。

私は、Bに対して遺留分の請求をするとともに、遺留分が確定するまで執行は待ってくれと遺言執行者であるDに対して申し入れをしました。

しかし、Dは、遺言のとおりに執行するのが私の役目だから、遺留分減殺請求はBとCの間で解決してくれ、手続きは引き続き行うと言ってきました。

遺留分の請求をしたにもかかわらず、Dが遺言の執行を続けることはできるのでしょうか。

おしえてください。

本件は、相続の開始がいつかによって遺言執行者が執行を中止すべきか異なります。

具体的には、以下にあるように、平成30年の民法改正の遺留分制度の見直しの改正部分が施行される2019年7月1日を境に対応が異なります。

遺留分制度の改正施行前後による対応の違い
従 来2019年6月末日までに被相続人が死亡して相続が開始した場合
⇒ 遺言執行者は一旦遺言執行を中止し、遺留分の確定を待って執行の手続きを再開するべきです。
改正後2019年7月1日以降に被相続人が死亡して相続が開始した場合
⇒ 遺言執行者は、遺言執行を中止する必要はありません。

本件事案は、相続の開始時期が不明ですが、Aさんが死亡したのが2019年7月1日の施行日以後か以前かによって、Dさんに遺言の執行の中止を求められるかが変わってきます。

 

 

遺留分と遺言執行の関係

弁護士遺留分というのは、ひらたくいえば、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた遺産から最低限もらえる権利といえます。

この制度は、長年、遺留分減殺請求の意思表示をすることで、遺留分を侵害している部分について贈与や遺贈の効力を失効させるものと理解されてきました。

そのため、その効力を失った部分については、遺贈の効果がなくなるわけですから、もし遺言執行者が執行すると、無効な遺贈について執行したことになり、その行為自体が遺留分の侵害に値する可能性があると言われています。

そのため、遺言執行者としては、遺留分減殺請求をした相続人がいる場合には、遺言執行を一旦中止して、その後、遺留分の協議や調停、訴訟などの結果が出た後にその結果に基づいて執行を再開すべきということになります。

 

▼遺留分の侵害について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

2019年7月1日以降に開始した相続の場合

お金と通帳しかし、上記のような遺留分減殺請求の制度は、平成30年の民法改正により変更されることになりました。

具体的には、施行日である2019年7月1日以降に開始した相続では、遺留分減殺請求ではなく、遺留分侵害額請求となり、遺贈などの効果を失効させる効果ではなく、あくまで侵害された金額分の金銭を請求できるだけの権利になったのです。

そのため、遺言による遺贈などの効果には影響せず、遺言執行者は遺留分侵害額の有無にかかわらず、遺言執行をして良いことになります。

以上から、被相続人が死亡したのが2019年7月1日以降なのか、以前なのかで、留分の請求があった場合の遺言執行者の執行を中止すべきかどうかが決まるといえます。

なお、遺留分の請求の時期は関係ありませんので、仮に2019年6月1日に相続が開始した事案で、遺留分の請求が施行日以後になされた場合であっても、改正前民法の適用となります。

 

 

遺言執行者はどこまでする義務があるか

面談2019年7月1日以前の遺留分減殺請求の場合には、遺言執行者は、遺言執行を中止すべきと解説しましたが、遺留分の確定について遺言執行者は何かしなければならないのでしょうか。

この点、遺言執行者はあくまで遺言を執行するためにいるのであり、遺言が無効であったり、一部失効する可能性がある場合には、執行自体の根拠が失われるため、その遺言執行を中止すべきということになりますが、一方で、遺言執行者自身が遺留分について調査をしたり、相続人同士の争いについて仲裁をする義務まであるわけではありません。

例えば、遺留分があるように思えても、実際には遺留分減殺請求をした人が生前に多額の生前贈与をもらっており、特別受益が遺留分を超える場合もありえ、その場合には遺言執行者は執行を中止すべきではないということになります。

もっとも、特別受益の判断は難しく、その調査まで遺言執行者が負うべきではないので、遺言執行者は、遺留分により遺贈の一部が失効する可能性があれば、執行を中止すべきといえるでしょう。

また、遺言執行者は、遺留分権利者やその請求をされた者の一方の味方をしたり、代理人となることもできませんので、遺留分についての争いを終わるまで静観していることが求められるといえます。

 

 

まとめ

弁護士入野田智也遺言執行者は、誰でもなることができ、受遺者や親族が遺言執行者と指定される場合も多いですが、現実には専門家ではないため、遺言執行を適切に行なっていないケースが散見されます。

遺言執行者は、法律上は誰でも良いのですが、争いを避けるためにも専門家である弁護士などを指定するのが良いですし、もし遺言執行者に指定された場合も、弁護士と相談しながら執行をするほうが良いでしょう。

遺言により執行手続が必要な場合には、まずは相続を専門とする弁護士にご相談ください。

 

▼遺言執行者について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 


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