遺留分がない相続人は、遺言執行者に遺産目録を交付してもらえないのですか?

遺言執行者

掲載日:2019年6月14日|最終更新日:2019年6月14日

男性先日、兄が亡くなり、遺言書に、「すべての遺産を解約や売却等換価して、Bに相続させる」と書いてありました。

そして、その遺言執行者として、兄の友人であるCが指定されていました。

私Aは、遺言執行が適切になされているか知りたくて、遺留分がないことは知りつつ、友人Cに遺産目録の交付を求め、執行が進んでいるのかを聞いたのですが、友人Cは、「何も権利のないあなたに説明する義務はない」と言って、目録の交付や執行の進捗についての説明を拒んできたのです。

遺留分がない私は、遺言執行者に遺産目録の交付や説明を求めることはできないのでしょうか。

おしえてください。

弁護士遺言執行者には、相続人に対して、就任から遅滞なく相続財産目録を作成して交付する義務があります。

また、相続人からの請求により、遺言執行者はいつでも遺言執行の状況や結果を報告しなければならないとされています。

そして、これらの義務について、遺留分権利者かどうかによって区別はされていませんので、相続人のAさんは、遺言執行者である友人Cさんに対し、遺産目録を作成して交付することを請求し、遺言執行の状況を説明してもらうことができるのです。

もし、友人Cさんがこの義務を怠った場合には、友人CさんはAさんに対して損害賠償責任を負う可能性もあります。

 

遺言執行者の義務

遺言書遺言執行者は、民法によりその権利義務が定められており、相続人に対して、相続財産目録を作成して交付する義務や、相続人の求めに応じて遺言執行の状況や結果を報告する義務(以下、「目録作成交付等義務」)といいます。)を負っています。

もっとも、本件のように、相続人ではあっても、遺言によって取得するものがないうえ、遺留分もないAさんに対してまで、目録作成交付等義務を負っているのかが問題となります。

なぜなら、Aさんは何も権利がないのですから、相続財産目録を確認したり、執行の状況を確認する利益がないとも考えられるからです。

 

遺言執行者の遺留分がない相続人に対する義務

この点、実務では、遺留分がない相続人であっても、遺言者は、相続財産目録を遅滞なく作成して交付する義務があり、相続人の求めに応じて遺言執行の状況や結果を報告しなければならないと解されています。

このことについては、裁判例がいくつかあります。

①法文の文言で遺留分があるかどうかによる区別は設けられていないこと

②包括遺贈の成否等について直接確認する法的利益があること

上記などの理由を掲げ、遺留分がない相続人に対しても遺言者は目録作成交付等義務があるとしています。

 

 

目録作成交付等義務を履行してもらえなかった場合

弁護士仮に、遺言者が目録作成交付等義務を履行しない場合にはどうすれば良いでしょうか。

遺言者が義務を怠っていることにより債務不履行ないし不法行為となりますので、それにより相続人が損害を被れば債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求も可能です。

現実に、裁判所が債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任を認めているものもありますので、遺言執行者に就任した人もそのような責任を負っていることを再確認していただきたいと思います。

 

 

その他の遺言者の義務

今回の目録作成交付等義務以外にも、遺言執行者が就任した場合の就職通知について平成30年民法改正で新しい規定が設けられました。

遺言執行者が就任した場合の就職通知について

2019年7月1日以降に就任した遺言執行者

その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない

正確には就任通知ではなく遺言の内容の通知ですが、遺言執行者としては、就任通知やその他の通知も兼ねてするのがよいでしょう。

今後は、このような相続人に対する通知が義務となっていることにも留意が必要ですし、2019年7月1日以前に就任した遺言執行者であっても、就任したことを相続人に通知し、相続人が不測の損害を被らないように努めるべきであるといえるでしょう。

 

 

遺言執行者になった人も注意が必要

六法全書と弁護士バッジ遺言執行者の権利義務については、平成30年民法改正により2019年7月1日の施行日より変更になり、上述のとおり相続人に対する遺言の内容の通知が必要になります。

もっとも、施行日前であっても、遺言執行者は善管注意義務を負っていますので、その執行にあたっては細心の注意を払う必要があります。

遺言の作成にあたり、遺言執行者を指定するようにアドバイスする業者や士業の方も多いと思いますが、素人の方を遺言執行者にすると、遺言の執行が適切になされなかったり遅延する場合も多々あり、それ以外にも、遺言執行者になる人によっては、相続人間に不公平感を生むなど、遺言執行者の指定が円満な相続において弊害になることさえもありえます。

遺言執行者を指定する場合には、遺言執行者自身を弁護士などの専門家とするか、指定された人が弁護士に相談したり復任できるように準備しておくべきでしょう。

遺言の作成をする場合には、まずは相続を専門とする弁護士にご相談ください。

 

 


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