特別受益と持戻し免除の推定とは?【弁護士が事例で徹底解説】

特別受益

掲載日:2019年5月13日|最終更新日:2019年5月13日

結婚している期間が20年以上ある場合、自宅を遺贈・贈与したとき、持戻し免除の意思表示があったものと推定されることをいいます。

以下、相談事例をもとに解説します。

事例 相談者:被相続人(亡くなった方)の妻

私は、夫と30年前に結婚しました。

自宅(マンション)は20年前に夫の名義で購入し、ローンは返済済みです。

5年前に、夫は自宅を私に贈与してくれました。

私は夫と二人で生活していたのですが、先日、夫が亡くなってしまいました。

相続人は、妻である私(Aさん、58歳)のほか、長男(Bさん、32歳)、長女(Cさん、28歳)の3人です。

夫の遺産は、預貯金の5000万円です。

なお、自宅マンションの価額(時価)は、贈与してくれたときは2500万円でしたが、現在は2000万円となっています。

このような場合、相続分はどうなりますか?

 

特別受益制度とは

被相続人(亡くなった方)から生前に、大学の学費や住宅購入資金の援助を受けている相続人を、特別受益者といいます。

このような贈与を受けた相続人がいる場合、何ももらっていない相続人からすれば不公平に感じます。

そこで、特別受益者がいる場合、生前に受けた利益(特別受益)を遺産の前渡しと考えて、相続財産にその額を加え(これを「持戻し」といいます。)、各相続人の相続分を計算します。

これが特別受益制度です。

特別受益についてくわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

特別受益の持戻しの要件

特別受益の持戻しが認められる要件は以下の次の2つを満たす場合です(民法903条)。

特別受益の持戻しが認められる要件

①共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき

②被相続人が持戻し免除の意思表示をしていないこと

 

持戻し免除の意思表示がある場合
 被相続人(夫)が遺言書に「妻に贈与した自宅は、相続財産に参入せず、また、妻の相続分から控除しないこととする」などの記載があれば、夫が持戻し免除の意思表示をしているといえます。

 

 

婚姻期間が20年以上の夫婦の特例

上記のとおり、被相続人が持戻し免除の意思表示をしておけば、特別受益者の相続分は減少せず、より多くの遺産を相続することが可能となります。

したがって、相談事例のケースにおいても、夫が妻(Aさん)により多くの遺産を残したいのであれば、遺言書や贈与契約書に持戻し免除の意思を記載すべきです。

しかし、特別受益制度のような法律の規定について、素人の方は知らない場合があります。

また、高齢化社会の進展に伴い、高齢配偶者の生活保障の必要性が求められています。

このような問題意識から、相続法が改正され、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、被相続人が他の一方に対し、居住用建物等を遺贈又は贈与したとき、持戻し免除の意思表示があったものと推定されるようになりました(民法903条4項・2019年7月1日施行)。

夫婦この規定は、婚姻期間が長期間に及んでいる場合、夫婦の一方(通常は夫)が他方(通常は妻)に対して、居住用不動産を贈与等した場合には、それまでの貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くする趣旨で行われるものと考えられ、遺産分割の場面において、配偶者の取得分を減少させる意図を有していない場合が多いという考えに基づくものです。

税務上の特例

自宅不動産を贈与すると、贈与税が問題となります。

贈与税は、基礎控除が110万円です。

不動産は、通常価額が高いため、通常通り課税すると、配偶者のために自宅を贈与する方がいなくなってしまいます。

そこで、婚姻期間が20年以上の夫婦において、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合、基礎控除110万円に加えて最高2000万円まで控除を受けることが可能です(相続税法21条の6)。

 

 

事例の検討

本ケースでは、Aさんは30年前に結婚しているので、「婚姻期間が20年以上の夫婦」に該当します。

したがって、民法第903条4項によって、亡夫の持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

そうすると、遺産は預貯金の5000万円のみです。

具体例

結婚時期:30年前

法廷相続分:

 妻(Aさん)2分の1
 長男(Bさん)4分の1
 長女(Cさん)4分の1

したがって、それぞれの相続分は次のとおりとなります。

Aさん 5000万円☓1/2=2500万円
Bさん 5000万円☓1/4=1250万円
Cさん 5000万円☓1/4=1250万円

 

遺留分の検討

BさんとCさんの遺留分は、875万円となります。

7000万円 ☓ 1/2 ☓ 1/4 = 875万円

したがって、相続分(1250万円)が遺留分額を超えているので、遺留分減殺請求の対象とはなりません。

なお、遺留分について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

持戻し免除の意思表示がなかった場合

民法第903条4項は、「推定」ですので、相続人がこれと異なる意思表示をしているときは、同条項は適用されません。

この場合、それぞれの相続分は次のとおりとなります。

Aさん 7000万円 ☓ 1/2 − 2000万円 = 1500万円
Bさん 7000万円 ☓ 1/4 = 1750万円
Cさん 7000万円 ☓ 1/4 = 1750万円

持戻しの価額
本ケースでは、贈与時の価額は2500万円でしたが、相続開始時は2000万円に減少しています。
特別受益がある場合、その財産評価の基準時は、「相続開始時」となります。
したがって、2000万円を持戻して相続財産とし(5000万円 + 2000万円 = 7000万円)、Aさんの相続分から特別受益額を控除します。

 

 

まとめ

弁護士特別受益は、持戻し免除の意思表示について、争いとなることが多々あります。

また、特別受益の価額についても、その評価が問題となります。

本ケースでは不動産の時価を特定していますが、実務では評価額自体が争いとなります。

そのため、相続問題に精通した弁護士に助言を求め、適切な解決となるよう注意すべきです。

当事務所の相続対策チームは、最新の相続法令を踏まえ、親身になって解決方法をご提案いたします。

当事務所のご相談の流れについてはこちらのページを御覧ください。

 

 

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