遺言書を作成しようと思うのですが、遺言執行者を指定すべきかどうか迷っています。遺言執行者を指定するメリットを教えてください。



弁護士遺言執行者を定める主なメリットとしては、

①遺言執行についての訴訟を遺言執行者が担当
②遺言の執行手続が円滑化
③ある相続人が第三者に対して相続財産を譲渡してもその譲渡行為は無効

という3つがあげられます。

メリット

①遺言執行に関する訴訟

裁判所

遺言執行者が定められている場合、相続人は相続財産の管理処分権限を失うことから、遺言執行に関する訴訟については、遺言執行者が担当することになります。

一般の方にとって、裁判をするのは一生に1回あるかないかというものですから、訴訟の当事者となることの精神的、肉体的な負担は小さなものではありません。被相続人が遺言書の中で遺言執行者を指定しておくことで、相続人はこのような負担から免れることができます。

また、相続人間で訴訟になった場合、どうしても相続人間の関係が悪化し、その後疎遠になってしまうことがあります。しかし、遺言執行者が訴訟を担当するのであれば、相続人間の訴訟ではないことから、相続人間の関係性が悪化するのを回避できる可能性があります。

そのため、被相続人としては、遺言執行者を指定することで、自分の子どもなど相続人同士が相続のことで将来揉める可能性を小さくすることができるといえます。

 

②手続の円滑化

書類と印鑑遺言書の中で不動産が第三者へ遺贈された場合の登記手続や預貯金の相続手続の中においては、遺言執行者が指定されていない場合、被相続人全員の印鑑証明書が必要となりますが、遺言執行者が指定されている場合には遺言執行者の印鑑証明書のみで足ります。そのため、遺言執行者が指定されている場合、各手続きが円滑になるといえます。

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月ですので、遺言の執行に関する各種手続を早く済ませることは非常に重要です。

 

③遺言どおりの相続の実現

被相続人が、不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言を遺している場合があります。

このような場合、被相続人には、その不動産を特定の相続人に相続させたいという強い希望があることが少なくありません。

しかし、遺言に反して、他の相続人がその不動産を第三者へ売却する可能性があります。

遺言執行者が指定されていない場合、他の相続人が行った譲渡行為のうち、自己の法定相続分を超える部分は無効ですが、自己の法定相続分に相当する部分については無効とはならず、遺言によって不動産を相続することになった相続人と譲渡を受けた第三者のうち先に登記をした方が優先されることになってしまいます。

書類

一方、遺言執行者が指定されている場合には、他の相続人が行った譲渡行為は全体として無効ですので、登記の先後に関係なく、遺言どおりに相続されます。

したがって、遺言書の中で遺言執行者を指定することで、遺言書の内容どおりに相続させることができるといえます。

 

 

デメリット

弁護士遺言執行者を定めると、遺言執行者に対する報酬が発生するという点がデメリットとして挙げられます。

もっとも、遺言執行者を定めなかったことから相続人間で紛争が起こり、その後、相続人が弁護士に依頼して紛争を解決することがあります。

紛争化した場合には各相続人が弁護士を選任することになりますし、また、そもそも紛争化した後の弁護士費用は高額になりがちですので、結果として、あらかじめ遺言執行者を定めていた場合の方が費用が安くなることもあります。

 

 

誰を遺言執行者に指定するか

未成年者と破産者以外であればだれでも遺言執行者になることができます(民法1009条)が、現実に遺言執行者を指定しようと考えた場合、候補として挙げられるのは、主に被相続人の親族、または弁護士や司法書士などの専門職です。

六法全書と弁護士バッジ個々の事情によって、専門職を遺言執行者に指定すべき場合と親族を遺言執行者に指定すれば足りる場合とがありますが、以下のような場合には専門職を遺言執行者にすべきです。
・相続人が多い
・遺産が複雑(不動産が多数ある場合等)
・相続人間で揉めることが既に予想されている

他方、以下のような場合には親族を遺言執行者としても問題が生じる可能性は小さいといえます。
・相続人が少ない
・遺産が単純(現金など分割が容易なものが遺産の大半を占める場合等)

 

弁護士を遺言執行者に指定するメリット

現在、遺言執行者に指定されている専門職には、弁護士の他に司法書士や行政書士などがいます。

そのため、専門職を遺言執行者に指定しようと考えた場合に、どの専門職に頼むのがよいか迷われる方が少なくありません。

しかし、遺言執行者を指定するメリットを最大化するという観点からは、弁護士を遺言執行者にすべきといえます。

弁護士バッジなぜなら、遺言執行者を定めるメリットの①遺言執行に関する訴訟、及び、③遺言どおりの相続の実現という点には、高い専門性が要求されますが、その専門性を備えているのが弁護士だからです。

相続問題について、弁護士以外の専門職は代理権を持っておらず、一般に取扱うことができません。

弁護士以外の専門職であっても遺言執行者に指定された場合には、遺言執行者の地位で、相続問題を取り扱うことができますが、必要な専門性を備えているのはやはり弁護士であるといってよいでしょう。

 

 


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