遺産分割や相続税にあたり、生前贈与はどのように扱うべきなのでしょうか?



先日、父Yが亡くなり、私A、兄B、弟Cが相続人となりました。

言い争いYの財産は、1000万円でしたが、私が 4年前に受けた結婚式費用 300万円、Bが 5年前に受けた不動産の購入頭金 300万円、Cが 2年前に受けた大学費用 300万円があり、兄弟でもめています。

遺産分割や相続税にあたり、これらの生前贈与をどのように扱うべきなのでしょうか?

 

 

まず相続についていえば、各相続人がYから生前にもらった現金が「特別受益」に該当するかという問題があります。

結婚式費用は、特別受益には一般的に該当しません。 不動産の購入頭金は、特別受益に該当するといえます。大学費用は、AやBが高校までしか出ていないような場合には、特別受益として認められる可能性が高いでしょう。

もっとも、特別受益に該当しても、持戻免除の意思表示があった場合には、相続にあたって考慮しません。

弁護士入野田智也

一方、相続税に関して言えば、特別受益に該当するかは関係なく、相続開始前 3年以内、つまりYが死亡する前 3年間にA、B、Cが受けた生前贈与はいかなる理由であろうと相続税の対象になります。

そのため、Aが受けた結婚式費用は 4年前であり、Bが受けた不動産の購入頭金は 5年前のものですので、相続税の対象とならないということになります。

また、Cが受けた大学費用は、3年以内の贈与ではありますが、親からの扶養義務に基づくものなので、非課税となっていますので、相続税の対象とはなりません。

税理士

結論として、ご質問の事案では相続税の計算にあたって、生前贈与を考慮する必要はないということになります。

 

特別受益と相続税

特別受益

相続が開始し、遺産分割協議を行うとしばしば問題となってくるのが、亡くなった方から生前贈与を受けていたことが考慮されないのかということです。

これを法律では、「特別受益」と呼びます。

高齢者特別受益は、「遺贈、婚姻または養子縁組のための贈与、生計の資本として受けた贈与」が該当しますが(詳細はこちらをご参照ください。)、本件の事案では、Aが受けた結婚式費用は特別受益には該当しないと一般には考えられています。

Bが受けた不動産購入頭金については、特別受益に該当することに異論はないでしょう。

Cが受けた大学費用は、他の相続人との関係によっては、特別受益となる可能性はあり、AやBが大学に行っておらず、Cだけが大学費用を出してもらっている場合などは特別受益となる可能性は高いでしょう。

弁護士もっとも、この特別受益に該当するとしても、生前にYが「この費用は、相続には関係ない」という意思表示(これを「特別受益の持戻免除の意思表示」といいます)をしていた場合には、相続にあたっても考慮しないということになっています。

また、この意思表示は明確には言っていなくても、黙示的な意思表示が認められることもあります。

 

相続税

お金

特別受益は、先に説明したとおり、特に期間の制限はなく、生前に相続人が被相続人から受けた贈与がすべて対象となります。

一方、相続税とは、誰かが亡くなった場合に、その亡くなったことに起因して財産を得た人に課される税金と考えてください。

つまり、相続人が得た財産以外に、生命保険金の受取金や死亡退職金の受取金なども相続税の対象となります。

そして、特別受益とは異なり、相続開始前3年以内、つまり亡くなる前 3年以内に相続人にした贈与についてのみ、相続税の対象となると法律は規定しています。

そのため、贈与が 5年前や 10年前の場合は特別受益に該当しても、相続税の計算の対象とはならないのです。

この点は、税理士と弁護士で言うことが違っているという人がいますが、そもそも「遺産分割」の話と「相続税」の話は別なので、言っていることが違うのも当然です。

六法と時計

特別受益に該当するかはその贈与が何を目的にしていたかによるのですが、相続税の対象となる贈与は、相続開始前 3年以内であれば、特別受益に該当するかを問いません。

なお、相続開始前 3年以内ではない贈与については、贈与を受けた側が贈与税を支払わなければならない場合があります。

本件で言えば、Bの受け取った 300万円は贈与税の対象になりますので、贈与税の申告をしていなければ申告をする必要があります。

 

まとめ

結論として、 特別受益と相続税の対象となる贈与は以下のとおりとなります。

特別受益 相続税の対象となる贈与
対象となる贈与 遺贈、婚姻または養子縁組のための贈与、生計の資本として受けた贈与 すべての贈与
贈与の時期 期間はない 相続開始前3年以内の贈与

弁護士入野田智也相続では、法的問題以外にも租税の問題や、その他の周辺分野の問題が生じることがしばしばあり、複雑な分野です。

インターネットにある情報でも、相続と相続税のことを混同しているものも見受けられます。

当事務所では、税理士登録もした弁護士が、法的問題以外にも適切にアドバイスをしますので、まずは気軽にお問い合わせください。

 

 


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