離婚協議中の配偶者が死んだ場合、住んでいた自宅を引き続き使用できる?
掲載日:2019年6月14日|最終更新日:2019年6月14日

私Bは、配偶者Aと離婚協議中だったのですが、Aが亡くなってしまい、現在は相続人であるAの母であるCともめています。
Aとの間に子どもはいません。
私は、住み慣れた自宅を離れたくないのですが、Cは、自宅はAが建てたものであるし、Aと離婚しようとしていたあなたは出ていくべきだと言っています。
しかも、Cは、Aから来たメールを見せてきて、そこには「離婚する前に自分が死んだら、Bのことを自宅から追い出してくれ」と記載してありました。
私は、自宅から出ていかなければならないのでしょうか。
また、Cは、Aは遺言を書くとも言っていたから、どこかにあるはずだとも言っています。
もしAが遺言で、自宅をCに取得させると書いていたら、やはり自宅を出ていかなければならないのでしょうか。
本件では、BさんがAさんの生前より自宅に無償で住み続けていた場合には、配偶者短期居住権が成立します。
そのため、遺言がない場合には、少なくとも遺産分割によって誰に自宅が帰属するか決まるまで又はAさんが死亡した日から6ヶ月が経過した日までは使用できることになります。
これは、AさんがBさんに使用させたくないという思いを遺していたとしても変わりません。
一方、遺言があり、その遺言で自宅をCさんに取得させる旨が書いてある場合には、Cさんが自宅の所有者となりますので、いずれは自宅から退去しないといけません。
もっとも、遺言が見つかってすぐに退去しないといけないわけではなく、Bさんが、自宅を取得するCさんから配偶者短期居住権の消滅の申し入れを受けた日から6ヶ月を経過した日までは自宅を使用することができます。
配偶者短期居住権とは
成立要件
配偶者短期居住権というのは、亡くなった方の配偶者の居住権を確保するために、平成30年の民法改正で導入された制度です。
「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していたこと」です。
ひらたくいえば、配偶者が死亡した日まで自宅を居住目的で使用していた場合には、配偶者短期居住権が成立し、一定期間自宅に住み続けることができるのです。

自宅に戻ることが想定されている様な場合には、配偶者短期居住権の成立はします。
配偶者短期居住権の存続期間
配偶者短期居住権の存続期間は、自宅について、残された配偶者を含めての遺産分割をする場合と、それ以外の場合で異なります。
それ以外の場合というのは、遺言で自宅の取得者が指定されている場合などです。

遺産分割をして自宅の取得者が決まった日か、死亡した日の6ヶ月を経過する日のどちらか遅い日まで存続することになっています(例など詳細は下記をご参照ください。)。

配偶者短期居住権が創設された趣旨
配偶者短期居住権が創設されたのは、配偶者が死亡した際、残された一方配偶者が住み慣れた自宅から即座に出ていなかければならないという状況が生じないように配偶者保護のために創設されたものです。


上記の平成8年の判例のような場合でも、配偶者に即座の退去を求めるのは酷であって、保護の必要性があると考えられたため、亡くなった配偶者の意思とは無関係に一定期間の自宅の使用を認めたのです。
ちなみに、この配偶者短期居住権が創設されたのちでも、上記の判例は配偶者以外の他の相続人が自宅を使用していた場合に意味のあるものといえます。
本件について
本件では、Bさんが、Aさんの所有している自宅に無償で住んでいた場合には、たとえ離婚協議中であったとしても、引き続き自宅を使用することができます。
この権利が前述の配偶者短期居住権です。
この配偶者短期居住権については、自宅に住んでいたことだけが要件なので、所有者であった死亡配偶者がどんな意思を表明していたかは関係ありません。
死亡前に無償で使用している事実(たとえそれが離婚協議中でも)があれば、死亡配偶者が出ていってほしいと思っていても、配偶者短期居住権は成立します。
存続期間について
存続期間については、以下のように場合分けをする必要があります。

誰が自宅の所有者となるか確定するまでは、この配偶者短期居住権は消滅しませんので、住み続けられます。
もし遺産分割の話し合いが長引いて10年かかったとすれば、その期間はこの配偶者短期居住権は消滅しないのです。
逆に遺産分割が早期に確定し、Aが死亡した日から6ヶ月を経過していない場合であっても、6ヶ月を経過する日までは住み続けられることになっています。

まとめ
配偶者短期居住権は、改正前には判例により対応されていたものをしっかりと明文化し、より配偶者保護をしている制度ですので、他の相続人や受遺者に自宅から出ていくように言われても焦る必要はありません。
相続については、改正もあってかなり複雑になっておりますので、まずは相続を専門とする弁護士にご相談ください。
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