自宅に店舗部分や賃貸部分がある場合でも配偶者居住権は成立する?

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掲載日:2019年6月13日|最終更新日:2019年6月13日

自宅の店舗部分や賃貸部分の配偶者居住権について、相談です。

私は、配偶者のAと住んでいたのですが、先日Aが亡くなりました。

しかし、Aが私のために遺言書を作ってくれており、配偶者居住権を取得させる旨が書いてあることがわかりました。

自宅は、元々Aの親とも住んでいたため二世帯住宅のようになっており、親が住んでいた部分はAの友人Bに賃貸しています。

また、Aが商売をしていたため、一部が店舗になっている状態です。

このような自宅不動産でも配偶者居住権は成立するのでしょうか。

また、配偶者居住権が成立する場合には、Bから賃料を取得できるのでしょうか。

家本件では、自宅に配偶者居住権は成立します。

店舗となっている部分も同様であり、配偶者居住権の効力が及ぶため、相談者さんが使用収益をすることができるのです。

一方、配偶者居住権は成立するものの、賃貸している部分については、Bが先に引き渡しを受けており、対抗できないために、相談者さんは使用収益ができないことになります。

また、Bは賃料を支払うことになりますが、Bが賃料を払う先は、配偶者居住権を取得した相談者ではなく、賃貸人たる地位を承継した所有者になるものと解されています。

もっとも、最終的な賃料の帰属先には議論がありうるところです。

※なお、この記事は改正後民法の適用を前提にしており、配偶者居住権については2020年4月1日以降に相続が開始しており、かつ施行日以後に作成された遺言に適用されるものですので、その点はご注意ください。

配偶者居住権の要件とは

配偶者居住権の要件は、以下のとおりです。

①配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していたこと

②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺贈等がされたこと

これらの要件を満たす場合に、配偶者居住権が成立するのですが、自宅が店舗に利用されていたり、賃貸に出されている場合には配偶者居住権が成立するのかが問題となりまえます。

弁護士この点、①要件に言う「建物に居住していたこと」という要件は、あくまで「居住していた」ことを要件としているのみであり、「建物全体を使用していたこと」を要件とはしていないので、その自宅に住んでいたという事実があれば、店舗に用いられている部分にも、賃貸に出されている部分にも配偶者居住権は成立するものと解されています。

もっとも、賃貸している部分については、第三者との関係で対抗問題となります。

対抗問題というのは、平たく言えばどちらも使用収益権がある場合に、どちらがその使用収益を認められるかということなのですが、対抗要件を先に取得した方がその使用収益を認められることになります。

賃貸の場合の対抗関係
賃貸の場合の対抗関係は、「賃借人が引き渡しを受けた」のと「配偶者居住権の登記」の先後関係で決まります。
そのため、基本的には賃貸借のほうが優先することになります。

このように定められている趣旨

解説する男性のイメージイラスト配偶者居住権の効力が建物全体に及ぶとされている理由としては、建物の一部に配偶者居住権が成立するということ自体を認めると、配偶者居住権が建物全体に成立する場合よりも低額で成立することになり、執行妨害目的で利用されることが懸念された点や、配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要であるところ、建物の一部を登記するという制度を作ることが難しいという事情があったようです。

理由はどうであれ、配偶者居住権は居住していた自宅建物であれば、どのように利用されていてもその効力が全体に及ぶということになるということです。

 

 

本件について

配偶者居住権 使用収益 賃料
自宅 相談者さん取得 相談者さん認められる
店舗部分 相談者さん取得 相談者さん認められる
賃貸 相談者さん取得(効力は及ぶ) 相談者さんは権利はあるが、Bさんが認められる(先に対抗要件を取得) 相談者さんとしては、建物の所有者へ請求することが考えられる

本件では、相談者さんが居住をしていたということなので、配偶者居住権は成立し、その効力は店舗部分にまで及ぶことになります。

つまり、店舗も含めて使用収益することができるのです。

一方、Bさんに賃貸している部分についてですが、配偶者居住権の効力は及ぶことになります。

しかし、相談者さんがBさんが借りている部分について使用収益をしようとするならば、Bさんに対抗できる対抗要件、つまり登記が必要になります。

もっとも、Bさんはすでに建物の引き渡しという対抗要件を取得しており、相談者さんがその後に配偶者居住権の登記をしたとしても、先に対抗要件を取得したBさんが勝つということになります。

お金と不動産それでは、Bさんが使用収益できるとして、配偶者居住権を取得した相談者さんはその賃料をもらうことができるのかという問題が生じます。

まず、Bさんとしては、賃貸人(建物を貸している人という意味)の地位を引き継ぐ建物の所有者に賃料を支払えば足ります。

しかし、その賃料は最終的には配偶者居住権を取得する相談者さんが取得すべきようにも思われます。

なぜなら、配偶者居住権を取得する際には、賃貸に出されている部分も含めてその権限の評価がされており、対抗できないとしても賃貸している部分の使用収益権も配偶者居住権を取得した人が持っているからです。

そうすると、相談者さんとしては、Bが支払った賃料を所有者に請求するということが考えられるでしょう。

もっとも、この問題は議論があるところだと思われますので、今後の残された課題とも言えます。

 

 

まとめ

登記済権利証書配偶者居住権は、その要件を満たせば建物全体を使用収益することのできる強い権利ですが、一方で速やかに登記をしない限り、第三者には対抗できないことになります。

また、賃貸人がいる場合に残された問題があるなど、新しい制度のため未知の部分が多いと言えます。

このような未知の部分のリスクをしっかりと考慮した対策が必要になりますので、まずは相続を専門とする弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

 


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