配偶者短期居住権とは?【配偶者居住権との違いを解説】

その他

配偶者短期居住権は、配偶者居住権と異なり、遺産分割が成立するまでなどの間における、配偶者の「短期的な」居住権を保護するものです。また、後述するような点で違いがあります。

以下、相談事例をもとに解説します。

事例

私は、夫名義の不動産(自宅)に夫と生活していましたが、先日、夫が死亡しました。

相続人は、妻である私(Aさん、60歳)のほか、長男(Bさん、35歳)、長女(Cさん、30歳)の3人です。

夫の遺産は、以下のとおりです。

・自宅不動産:3000万円(時価)

・預貯金:7000万円

夫の遺言書には、「自宅不動産を長男に相続させる」と記載されていました。

私としては、自宅に強いこだわりがあるわけでもなく、夫の意思を尊重して長男に自宅を明け渡したいと考えています。

しかし、夫の死後、法要などで忙しく、しばらくの間は引っ越しをする余裕がありません。

いつまで自宅に居住できるのでしょうか?

 

 

配偶者短期居住権が認められる場合

夫婦が共同で生活している自宅が夫の単独名義となっていることはよくあります。

夫が死亡し、自宅を第三者が取得すると、妻は自宅を明け渡さなければなりません。

しかし、直ちに明け渡さなければならないとなると、妻に酷といえます。

そこで、遺産分割が成立するまでなどの間における、妻の短期的な居住権を保護するために、相続法が改正されました(配偶者短期居住権の施行は2020年4月1日)。

配偶者短期居住権が成立する要件
「被相続人の財産に属した建物に相続開始のときに無償で居住していた場合」(改正民法1037条)。

したがって、相談事例のように、妻が夫とともに、夫名義の自宅で生活していたような場合、配偶者短期居住権が成立することとなります。

なお、相続法改正前は、「遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していると推認する」などとして、配偶者を保護する裁判例もありました(最判平8.1.2.17)。

しかし、本判例はあくまで、推認であり、夫がこれと明確に異なる意思を表示していた場合(自宅を第三者に遺贈した場合など)、妻を保護できない可能性がありました。

相続法改正によって、このような問題は無くなったといえます。

 

 

配偶者短期居住権が認められない場合

次の場合は配偶者短期居住権が認められません。

配偶者が配偶者居住権を取得した場合

配偶者が配偶者居住権を取得した場合は、配偶者が長期的に保護されているので当然といえます。

相続人の欠格事由(民法891条)に該当する場合、又は、廃除によって相続権を失ったとき

欠格事由等に該当するような配偶者は保護に値しないという場合です。

 

配偶者居住権についてくわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

配偶者短期居住権の効力

配偶者は、次の区分に応じて、無償で自宅に居住できます。

①遺産分割すべき場合
遺産分割が成立した日、又は、相続開始時から6ヶ月が経過した日のいずれか遅い日
なお、遺産分割には、協議分割(改正民法907条1項)、審判・調停による分割(同条2項)、指定分割(遺言による遺産分割方法の指定等・民法908条)があります。
②上記以外の場合
配偶者短期居住権の消滅申入時から6ヶ月が経過した日
②は、配偶者が相続放棄した場合や、相続分の指定により居住建物について、配偶者の相続分がないものとされた場合です。

本件事例においては、長男が遺言により自宅を取得しているので、②の場合に該当します。

弁護士したがって、AさんはBさんから配偶者短期居住権の消滅申入れを受けた日から6ヶ月を経過するまでの間、自宅に居住できることとなります。

 

 

配偶者短期居住権と配偶者居住権の違い

相続法改正によって、配偶者居住権が創設されました。

配偶者短期居住権との違いについて、下表にまとめたので参考にされてください。

配偶者居住権 配偶者短期居住権
成立要件 ①遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき(注)

②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

相続開始のときに無償で居住していること
居住できる期間 配偶者の終身の間

ただし、遺産分割協議、遺言に別段の定めがあるとき、又は家裁が遺産分割審判において別段の定めをしたときはその定める期間

①遺産分割すべき場合

遺産分割が成立した日、又は、相続開始時から6ヶ月が経過した日のいずれか遅い日

②上記以外の場合

配偶者短期居住権の消滅申入時から6ヶ月が経過した日

第三者への対抗要件 登記を要する 登記を要しない
用法遵守義務 有り
配偶者は善管注意義務を負う
無断で第三者に使用させることの禁止 第三者に使用させる場合は建物取得者の承諾が必要
居住権の譲渡の禁止 譲渡禁止
配偶者による必要な修繕の可否 可能
建物取得者の修繕の可否 配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしない場合は可能
配偶者の通知義務 修繕を要するとき、又は居住建物の権利主張をする者があるとき、居住建物取得者へ遅滞なく通知する義務を負う。すでに知っている場合は除く。
必要費等 通常の必要費については配偶者が負担

通常の必要費以外の支出については、建物取得者は民法196条による償還

有益費については、裁判所が請求により相当の期限を許与できる。

居住権の消滅事由 ・期間を定めたときはその期間が満了したとき
・用法遵守義務違反、無断の第三者使用の場合
・配偶者の死亡
・居住建物の全部滅失等
・期間を定めたときはその期間が満了したとき
・用法遵守義務違反、無断の第三者使用の場合
・配偶者の死亡
・居住建物の全部滅失等
原状回復義務 原則あり
配偶者に帰責事由がない場合を除く。
付属物の収去義務 原則あり

分離できない物や分離に過分の費用を要する物を除く。

損害賠償請求権、費用の償還請求権の期間 居住建物返還時から1年以内

配偶者居住権についてくわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

まとめ

配偶者短期居住権は、新しい制度であり、正しく理解することがポイントとなります。

成立する要件や効果については、上記のとおりですが、具体的な事案により対応が異なるため、相続問題に精通した弁護士に助言を求め、適切な解決となるよう注意すべきです。

当事務所の相続対策チームは、最新の相続法令を踏まえ、親身になって解決方法をご提案いたします。

当事務所のご相談の流れについてはこちらのページを御覧ください。

 

 

関連Q&A

 

 

執筆者

[ 相続Q&A一覧に戻る ]


 

相続発生後のお悩み解決法



なぜ弁護士に相談すべき?