遺留分を侵害されている場合、遺産分割協議ができる?【相続弁護士が解説】



Xさんがお亡くなりになられました。

ご遺族(相続人)には、妻A、長男B、長女Cの3人がいます。

Xさんの死後、遺言書が見つかりました。

遺言書には、Xさんの自宅不動産を妻Aさんに遺贈する旨記載されていました。

長男Bさんと長女Cのさんは、Xさんには、自宅不動産のほかにはめぼしい遺産がなかったことから、Aさんばかりが得をする、この遺言の内容に不満を持ちました。

そこで、当事務所の相続対策チームに相談に訪れました。

なお、BさんとCさんは、自分たちの遺留分が侵害されていることに対して、納得がいかない様子でしたが、母親であるAさんに対して裁判をすることは避けたいと考えていました。

 

 

遺留分とは

財産分与遺留分とは、残された相続人(兄弟姉妹を除く)に対する最低限の財産保証をいいます。

遺産は被相続人(亡くなった方のこと)のものですから、本来、被相続人は自己の財産を自由に処分できます。

しかし、遺産は相続人の生活の保障となる場合もあり、これを全く自由に許すと、被相続人の財産に依存して生活していた家族は路頭に迷うことになりかねません。

そこで、相続財産の一定割合を一定の相続人に確保するために設けられたのが、遺留分減殺請求です。

 

 

遺留分の割合

遺留分の割合は、次のとおりです(民法1028条)。

・直系尊属のみが相続人である場合:被相続人の財産の3分の1
・その他の場合:被相続人の財産の2分の1

本件では、下記の算定により、BさんとCさんの遺留分は8分の1となります。

相続人であるA、B、Cの法定相続分はA=2分の1、B=4分の1、C=4分の1
この相続分に総体的遺留分率である2分の1を乗じると、個別的遺留分はA=4分の1、B=8分の1、C=8分の1

したがって、BさんとCさんは、本件において、8分の1の遺留分全部が侵害されていることとなります。

遺留分の計算方法についてくわしくは「弁護士が遺留分減殺請求を解説!」をごらんください。

遺留分の行使は、受遺者または受贈者に対する意思表示で足り、必ずしも裁判で請求する必要はありません。

税のイメージ画像また、いったんその意思表示がなされれば、法律上当然に減殺の効力が生じるものと考えられています(最判昭41.7.14)。

したがって、本件においても、BさんとCさんは、遺留分減殺の意思表示を行うことがポイントとなります。

遺留分減殺請求がなされると、自宅不動産については、Aさん、Bさん、Cさんの共有関係が成立します。

 

 

遺留分においても遺産分割協議が重要!?

自宅評価本件において、BさんとCさんが不満なのは、自宅不動産がAさんに取られることではなく、自分達の権利が蔑ろにされていること(遺留分を侵害されていること)にあります。

BさんとCさんとしては、自宅不動産に母親が住んでもらっていて構わないはずです。

ただ、Aさんが自宅不動産全部を取得するのであれば、その代償金を支払ってもらいたいと考えるのが通常です。

このような柔軟な解決に導くために、遺産分割協議は極めて有効です。

例えば、本件の自宅不動産の時価が800万円だとした場合、自宅不動産はAさんが取得し、BさんとCさんは遺留分相当の100万円(800万円☓1/8)をAさんに支払ってもらうという内容での遺産分割協議が考えられます。

 

 

遺産分割協議書の記載例

では、具体的に、どのような遺産分割協議書を作成すればよいのか、以下ではサンプルを示します。

 

第◯条
Aは、B及びCに対し、B及びCのAに対する遺留分減殺請求により、別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件不動産」という。)について、B及びCが各8分の1の持分を有することを確認する。

第◯条
Aは、B及びCに対し、遺産取得の代償として、各100万円の支払債務を負担することとし、これを◯年◯月◯日限り、B及びCの指定する口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料はAの負担とする。

第◯条
B及びCは、前条の支払いを受けるのと引き換えに、Aに対し、本件不動産について、遺産分割を原因とする第◯条のB及びCの持分の持分移転登記手続を行うものとする。ただし、登記手続費用はAの負担とする。

第○条
AがB及びCに対する第◯条の支払いを怠った場合、Aは、B及びCに対し、第◯条の金員から既払い金を控除した残額及びこれに対する◯年◯月◯日から支払い済みに至るまで年◯%の割合による遅延損害金を付加して支払うものとする。

 

遺留分侵害がある場合の遺産分割協議書(不動産の場合)のダウンロードは「遺産分割関連書式集」をどうぞ。

 

 

遺留分侵害があるケースの遺産分割協議の問題点

遺留分侵害があるケースの遺産分割協議には、以下のような問題点が考えられます。

意思表示が不明確

遺留分侵害がある場合、相手方に対する意思表示が重要となります。

これを明確にしておかないと、後々「言った言わない」の争いとなります。

遺留分減殺請求は期間制限があり、1年以内に行使しないと、その権利はなくなります(民法1042条)。

そのため、遺留分減殺請求の意思表示を証明できないと、権利が消失するリスクがあります。

 

不動産の時価算定は困難

弁護士本ケースでは、自宅不動産の価値を800万円と決めつけていましたが、実務では、この価額をめぐって争いとなります。

なぜならば、遺留分を行使する側には時価は高いほうがメリットがあり、逆に、行使される側には時価が低いほうがメリットがあるからです。

不動産の時価は、固定資産税の評価額や相続税の評価額とは異なります(通常は時価の方がはるかに高い。)。

そして、この時価算定は、プロでないと難しいという問題があります。

 

当事者同士での話し合いは困難

夫婦不動産の時価算定ができたとしても、遺産分割協議が難しい場合があります。

特に、親族同士の場合、過去の経緯等から感情的になっており、冷静な話し合いができないことが多くあります。

 

 

関連Q&A

 

 


[ 相続Q&A一覧に戻る ]
 

弁護士が教える!相続お悩み別解説



なぜ弁護士に相談すべき?