連載コラム① 第1話「突然の訃報」


連載コラム解説図

1 訃報

「お父さんが亡くなりました。」

平成30年1月4日、まだ正月気分の抜けない日に、病院の知らせを受けたAは、急いで小倉に住む長男のBに連絡をして、一緒に病院に行くことにした。

病院に行くと冷たくなった父Zがおり、元気だったとは言えないまでも、数日前まで普通に話していた父が亡くなったことをAもBも受け止めきれなかった。

それでも、お葬式の準備はしなくてはいけないと思い、Aは、Bと相談して、近くにある葬儀場に相談に行き、無事に葬儀を終えることはできた。

男性
なんかあっという間だったね
女性
父さんが死んだことを悲しむ余裕もなかったわね。でも、これから遺産を分けないといけないから、また沢山手続きがあるんじゃないかしら
男性
いやいや、相続人は僕と姉さんだけだし、今残っている相続財産も自宅と預貯金 1000万円だけだから、いっそ自宅を売却して 2分の1ずつ分ければ、簡単じゃないかな。確か、固定資産税評価額が 1000万円くらいだったと思うよ。
女性
それはいいわね!自宅ももう古いし、私もBも使わないなら、売ってしまってさっぱりしてしまいましょう。今度、不動産屋に相談しに行かないといけないね。

 

 

2 戸籍取得は大変

数日が経過した1月13日、とりあえず葬式費用や今後の供養のための費用だけでも引き出したいと考えたAとBは、一緒に銀行に行くことにした。

男性
父が亡くなったので、父名義の預貯金を解約したいんですけど、どうしたらいいですかね。
「相続の手続きですね。それではこちらでお待ちください。」

少し待って案内されるA及びB…

「相続の手続きということですが、戸籍等はお持ちでしょうか。」
男性
え。いや、特に何も持ってきてないですけど、相続人は子どもの僕たちだけです。
「そうなのですね。大変申し訳ありませんが、戸籍などの必要書類をそろえていただき、お二人が相続人であることが確認できませんと、預貯金の解約はできないのです。」
男性
そうですか…。戸籍って死んだ父親のものと、僕らの戸籍でいいのですか。
「必要な戸籍は、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人の戸籍が必要です。もし、ご来店されない相続人がいる場合には、その方の印鑑証明書をお持ちいただかないと手続きができません。」
男性
え! 戸籍ってそんなにたくさん必要なのですか!? 最近のものは見たことがありますけど、父の昔の戸籍なんてみたことありませんよ…。どうしたらいいですかね。
「戸籍は、本籍地の役所に請求することになります。戸籍には、移動前の本籍地が書いてありますので、それを頼りに順にたどっていくしかないですね…。結構大変ですので、戸籍の取得を弁護士など士業の方にお願いする人も多いみたいですよ。」
男性
戸籍の取得は自分では大変そうですね…。一度弁護士に相談してからまた来ます。有難うございました。

 

解説&ポイント

ポイント誰かが亡くなった場合には、必ず戸籍が必要になります。銀行の手続でもそうですし、不動産の登記を移転するためにも戸籍が必須になってきます。

しかし、取得する戸籍を少なくすることは可能です。その方法とは、「公正証書遺言」を残すことです。通常の相続分で分ける場合にも、公正証書遺言を残しておくことで、亡くなったことがわかる戸籍及び遺産を受け取る人の現在の戸籍のみで手続きできるようになります(ただし、銀行等によっては、戸籍を求めてくる場合もありえます)。

つまり、公正証書遺言を残さない場合、仮に子ども1人しか相続人がいない場合でも、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になり、場合によってはかなりの量の戸籍を取得しなくてはなりません。なぜなら、銀行や登記所は、本当に1人しか相続人がいないかを確認しなければならないからです。

しかし、結論は同じでも、公正証書遺言に「◯◯にすべての遺産を相続させる」と書いておくだけで、その人が遺産を承継することがわかるので、戸籍も必要最低限のものだけで足りることになるのです。

そのため、当事務所でも、公正証書遺言を残すことをおすすめしております。公正証書遺言は作成にお金がかかるので、作成をためらう方もいらっしゃいますが、自分が死んだ後の相続人のことを考えると、作成しておくべきものです。亡くなった後に、相続人の人が苦労するのを見たくないですよね? — もしこの問の答えがYESであれば、必ず公正証書遺言の作成をご検討下さい。

なお、遺言は自筆でも書くことができますが、自筆証書遺言の場合には、検認という家庭裁判所の手続が必要になり、この手続を経ないと銀行等も手続をしてくれません。そして、この検認には、申立のために戸籍が必要になるため、戸籍取得の手間は変わらないことになってしまいます。

 

 

3 相続人が他にもいるかも?

A及びBは、当日に、近くの弁護士事務所に電話を掛けて翌日の相談予約をとった。

そして、翌日の14日、弁護士事務所を訪れたA及びBは、弁護士と話をして、一抹の不安を覚えた…

弁護士
はじめまして、弁護士のLです。本日はよろしくお願いいたします。
男性
先生、今日はよろしくお願いいたします。
弁護士
今日は、相続の相談と伺っていますが、まずは経緯を教えていただけますか。
男性
はい。私たちの父が4日に亡くなりまして、その相続のご相談なのですが、特に争いはなく、戸籍の取得だけお願いしようと思っているのです。
弁護士
お父様が亡くなられたのですね。大変でしたでしょう。戸籍の取得を任せたいということですが、相続人調査ということでよろしいでしょうか。
男性
相続人調査…? いえ、相続人は私達だけですので、相続人調査というわけではなく、戸籍をすべて取得していただきたいのです。
弁護士
説明不足で済みません。戸籍を取得することで相続人が判明するので、相続人調査と呼んでいるのです。えっと… 相続人はお二人だけということですが、それは確かなのでしょうか。この手の事案では、戸籍を集めると、他の相続人がいたということがたまにあるので、他に相続人がいる可能性は考えておいた方がいいですよ。
男性
他の相続人ですか…? いえ、母も亡くなっていますし、子どもも私と姉のBだけですから…
女性
あ… そういえば… Bが小さいころだったから覚えていないかもしれないけど、お母さんが亡くなる前、お父さんには前妻がいたっていう話をしていた覚えがあるわ… 私もまだ小学生くらいだったし、あまり気にしていなかったけど…
弁護士
そうなのですね。そうすると、前妻との子どもがいる可能性がありますね…。そのお子さんも相続人になりますよ。
男性
え、前妻や前妻との子どもも相続人なのですか?
弁護士
いえいえ、前妻の方は離婚しているので相続人ではないですよ。しかし、前妻のお子さんはお父様のお子さんですので、相続人です。
男性
そうなんですね…(肩をがっくり落とす)
弁護士
とりあえず、相続人調査をしてみましょう。どのくらいかかるかは戸籍がどれだけあるかによりますが、1~2か月は見ておいていただければと思います。それが終わって相続人が他にもいた場合には、またお話ししましょう。
男性
そうですね。戸籍の取得をお願いします。よろしくお願いいたします。

戸籍の取得を弁護士に任せたA及びBは、戸籍を取得してもらえるという安心感と、他の相続人がいるかもしれないという不安を抱えながら、家に帰った。

解説&ポイント

ポイント本文のAやBのように相続人調査は不要だと考えている人も多いかと思います。しかし、相続人を欠いて遺産分割協議をしても無効なため、銀行等での手続は全くできないことになりますから、必ず相続人調査は必要です。

相続人調査は実際に行ってみると、とても大変です。戸籍を見ても、昔の戸籍は旧字体で書いてあったり、判読が難しかったりするものが少なくありませんから、戸籍の取得は弁護士等に任せたほうが良いでしょう。

 

 

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