法定相続情報証明制度で何が変わるの?
平成29年5月29日から、法定相続情報証明制度というものが始まり、相続の手続が簡易化されるといわれていますが、みなさんはご存知でしょうか?
昨年2016年7月に発表され、当事務所でもコラムを出しましたが、その制度がいよいよ今月29日から始動することになりました。
従来の不都合点とは
従来は、相続財産の登記や亡くなった方の名義の銀行の口座の解約をするには、毎回、亡くなった方の法定相続人が誰であるかを証明するための戸籍謄本等を提出する必要がありました。
そして、その手続きを同時に進めようとすれば、沢山の戸籍謄本等の束を何個も用意する必要があり、その費用は塵も積もればで、結構な額になってしまうことが少なくありませんでした。
新制度により手続きは楽になる?
しかし、法定相続情報証明制度が開始すれば、一定の手続きを踏むことで登記官から認証文付きの法定相続情報一覧図(以下「認証一覧図」といいます)というものを発行してもらえるようになります。
そして、この認証一覧図さえあれば、相続不動産の登記手続や銀行等の金融機関での手続を戸籍謄本等の束なしで行うことができるようになります。
その意味で、法定相続情報証明制度を用いることによって、相続の手続きは楽になる面があるといえます。
新制度の流れ
法定相続情報証明制度を用いるためには、以下の手続きが必要になります。
② 法定相続情報一覧図を作成
③ 申出書と上記一覧図を登記所に提出
④ 登記官による確認・認証一覧図の交付
つまり、手続きをする相続人が戸籍謄本等を揃え、法定相続情報一覧図というものを作成して登記所に提出することで、登記官から一覧図に認証をもらい、その後は、認証文付き法定相続情報一覧図の写しを無料で交付してもらうことができるようになるということです。
新制度のメリットと留意点
前述のとおり、認証一覧図の写しで、相続財産である不動産の登記や亡くなった方の名義の銀行の口座の解約等ができるようになるので、何度も戸籍謄本等の束を取得する必要はなくなり、手続きにもっていく書類は減り、費用も安く済むようになることがこの新制度のメリットといえます。
しかし、そもそも亡くなった方の相続人を確定するための戸籍謄本等を収集するのが手間なのですが、1度はすべての資料をそろえなければならないことには変わりありませんので、その点には留意が必要でしょう。
相続人は、一度は手間をかけなければならないのです。この点については、より一層の制度改善が望まれます。
弊所では、その相続人調査の代行も行っておりますので、戸籍謄本等の収集が面倒だという方、収集の仕方が分からないという方は、ぜひ一度ご来所ください。
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