連載コラム② 第2話「名義を放置していた不動産は誰のもの?」


弁護士は、早速戸籍の取得に取り掛かった

そして、2か月後、すべての戸籍がそろったので、N弁護士はAとBとの打ち合わせをすることにした。

弁護士
戸籍を取得して相続関係図を作成してみましたので、こちらをご覧ください(相続関係図を提示する)。灰色になっている方はすでにお亡くなりになっている方で、黄色く塗りつぶしているのがPさんの相続人ということになります。

男性
えっと・・・そうすると、YさんとJさんと話し合いをすることになるのでしょうか。
あれ?Gさんは関係ないのですか?
弁護士
YさんとJさんと話し合うということで間違いありません。TさんよりHさんが先にお亡くなりになっているので、GさんはPさんの相続には全く関係ないということになります。
男性
すみません。よくわからないので、もう少し説明をしていただけますでしょうか。
弁護士
わかりました。まず、Pさんが亡くなった時に、配偶者であるQさんも長女のSさんもお亡くなりになっていたようなので、Pさんの相続人はRさんとTさんで、2分の1ずつ相続したことになります。
次に、Rさんが亡くなった際に、配偶者のVさんはすでに亡くなっていたようなので、一人息子であるZさんがすべて相続をしましたので、『Pさんの相続分2分の1』も相続したことになります。そして、Zさんが亡くなった際に、配偶者のUさんは亡くなっていたので、お子さんであるAさんとBさんが、『Pさんの相続分2分の1』を2分の1ずつ相続したことになるのです。
また、Tさんが亡くなった際に、長男のHさんは亡くなっていたようなので、夫のYさんと二男のJさんが『Pさんの相続分2分の1』を2分の1ずつ相続したことになるのです。
わかっていただけましたでしょうか。
男性
えーと・・・
Yさんは相続するのに、なぜGさんは相続できないのでしょうか。Tさんが亡くなった場合に、Hさんの代わりにGさんが相続人にはならないのでしょうか。
弁護士
その点については、TさんとHさんの死亡の先後関係によるのです。Tさんが亡くなった時にHさんがご存命であれば、Hさんが相続して、その相続分をGさんが相続することになりますから、Gさんも関係してくることになります。しかし、Hさんが先に亡くなっているので、Tさんが死んだ際にHさんは相続せず、結局Gさんも無関係なのです。仮にですが、HさんがTさんより先に亡くなっていたとしても、Hさんのお子さんがいらっしゃれば、そのお子さんが相続をすることになり、それを『代襲相続』と呼びます。要は、Hさんの代わりに子どもが相続しますよということです。この代襲相続は子どもには認められていますが、配偶者には認められていないのです。
男性
なんとなくですが、わかりました。では、YさんやJさんに連絡を取ることになるのでしょうけど、正直なところ、YさんやJさんとは一切交流がなく、どこにいるかもわからないのですが・・・今後どのような感じで話し合うことになるのでしょうか。
弁護士
連絡先については大丈夫です。戸籍の附票もとっておきましたので、Yさんは福岡市内に、Jさんは大阪の方に住んでいることが分かっています。
話し合いの流れとしては、今回のP名義の財産について遺産分割協議を行いたい旨の通知書をYさんやJさんに送り、電話か書面で返答をいただくようにいたします。そして、電話や書面でやり取りをしつつ、最終的にAさんかBさんがPさん名義の不動産を取得できるように遺産分割をまとめる話し合いをしていきたいと思っています。
男性
先生、お願いします。ちなみに、私たちが不動産を取得するにあたり、YさんやJさんに何か金銭を支払わなければならないのでしょうか。
弁護士
金銭を支払わなければならないかは話し合い次第ですが、P名義の財産は固定資産税評価額が40万円ですので、すべての相続人が4分の1の相続分だとすると、1人10万円ということになります。そのため、話がこじれればこれ以上の支出は確実なので、はじめから10万円の支払を提示するのが良いかと思います。
男性
先生のおっしゃるとおりですね。そのような提示を前提として書面を作成していただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

解説&ポイント

相続分について

ポイント相続分については、配偶者が2分の1というような形で良く知られているのではないかと思います。しかし、配偶者は必ずしも2分の1の相続分ではありませんので、その点を補足的に解説したいと思います。

(1)法定相続分とは
巷で2分の1とか4分の1とか言われているのは、「法定相続分」というものです。法定相続分は、遺言書がなかった場合の相続分ですが、遺産分割協議によって法律とは異なる割合で分けることは自由ですから、話し合いで自由に決めてよいのが原則です。しかし、多くの場合はこの法定相続分を前提として分けます。
法定相続分は、相続人が誰になるかによって決まりますが、誰が相続人になるかは、下記のとおり法律で順番が決まっています。
① 配偶者がいる場合には、配偶者の人は必ず相続人となります。
② 子どもがいる場合には、配偶者と子どもが相続人になり、子どもが先に死んでいた場合でも、孫がいれば孫が代襲相続人となります。
③ 子どもも孫もいない場合には、配偶者と直系尊属(父母や祖父母)が相続人になります。ただし、父母も祖父母もともに生きている場合には、亡くなった方に近い父母が相続人となります。
④ 子どもも孫もおらず、直系尊属も亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子どもが代襲相続人となります。

(2)法定相続分の割合
法定相続分は、それぞれの場合で以下のとおりとなります。見ていただいて分かる様に、①以外は配偶者の相続分は2分の1より多くなっており、順番が後になるほど、相続分は減っていくような形になります。なお、配偶者がいない場合には、相続人それぞれが等分で分けることになります。
① 配偶者 + 子ども(ないし孫などの代襲相続人)
配偶者:1/2
子ども一人当たり:1/2 ÷ 子どもの人数
② 配偶者 + 直系尊属(父母、祖父母など)
配偶者:2/3
直系尊属一人当たり:1/3 ÷ 直系尊属の数
③ 配偶者 + 兄弟姉妹(ないし代襲相続人)
配偶者:3/4
兄弟姉妹一人当たり:1/4 ÷ 兄弟姉妹の数

(3)昭和37年から昭和55年までの相続は要注意!
現行法では、(2)で説明したとおりですが、昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までに亡くなった方がいらっしゃる場合には要注意です。なぜなら、昭和55年の相続法の改正により、昭和56年1月1日より現行法が適用となっているからです。
昭和55年改正前は、相続順位は変わりませんが、配偶者の相続分が以下のとおりでした。
① 配偶者 + 子ども(ないし孫などの代襲相続人)
配偶者:1/3
子ども一人当たり:2/3 ÷ 子どもの人数
② 配偶者 + 直系尊属(父母、祖父母など)
配偶者:1/2
直系尊属一人当たり:1/2 ÷ 直系尊属の数
③ 配偶者 + 兄弟姉妹(ないし代襲相続人)
配偶者:2/3
兄弟姉妹一人当たり:1/3 ÷ 兄弟姉妹の数

昭和55年以前の法律が関係あるのかと思われる方も多いかと思いますが、次に説明する数次相続ということは実務上良くあることで、その場合には相続分が違うことを知らないと、不利な相続をしてしまう可能性もありますので、お気をつけてください。

複数の相続が続く「数次相続」

本件のように、相続が発生したにもかかわらず、名義を変更せずにそのまま放置していることは少なくありません。このような場合、相続人が亡くなって次の相続が開始するため、相続が複数となるので、数次相続と呼ばれたり、二次相続と呼ばれることがあります。
その名称には意味はありませんが、数次相続になると、話し合いをしなければならない相続人の数が増えることが通常ですので、問題は複雑化し、より解決が困難となりますので、子どもや孫にその負担を負わせることになるのです。他の相続人と話し合うのが面倒だとか、名義を書き換えなくても支障はないという認識を改めていただいたほうが良いかと思います。
当事務所で相談に来られた方の中には、相続人が20人を超える事案もあります。そうなると、解決のために費やす時間・費用は膨大となり、あきらめざるを得ない結果となってしまうこともあります。
そのため、遺産分割が終わっていない相続があることが分かった場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

 

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