連載コラム① 第5回「内縁の妻という立場」


相談

9 誰が対応するの?

「どうしたらいいのだろう…」

Gは、どうしたらいいかわからず悩んでいた。

Gは、Cと一緒に暮らし、介護していた身であるが、婚姻関係にはない。いわゆる内妻である。

Cは、2年前くらいに事故にあってから認知症が急に進み、そのあとは1人で日常のこともできなくなったため、Cの年金を頼りにCは介護施設に入所して、Gが介護のお手伝いをしている状態であった。

Gは、Cに長年付き添っているものの、AやBはおろか、DやEのことも聞いておらず、弁護士事務所から届いた通知をみても、何のことかさっぱりわからなかった。

そこで、たまたま、以前離婚でお世話になっていた弁護士Vに相談をしに行った。

弁護士
ご無沙汰しております。今日は、どのようなご相談でしょうか。
女性
こちらを見ていただけますでしょうか

Gは、Vに通知書を見せる

弁護士
これは、Cさん宛ての通知書ですね。えっと… GさんはCさんの配偶者ということですかね。Cさんは、今日はいらっしゃってないようですが…
女性
はい。婚姻届は出していないのですが、長年連れ添っている内妻です。Cは、認知症が進んでいて、会話も難しいので、今日は施設の方に任せてこちらに来ました。
弁護士
そうなのですね。Cさんには、後見人などはついていないですかね。
女性
『こうけんにん』ですか? 『こうけん』ってどんな字を書くのでしょうか。
弁護士
(紙に文字を書きながら)こちらの字を書いて『こうけんにん』と言います。要は、認知症などで判断能力が怪しい人の財産を管理してくれる人で、裁判所が選任する人のことです。
女性
後見人はついていませんね。私が事実上その役割をしているのだと思います。後見人が必要なのでしょうか。
弁護士
今回の相続の件については、Cさんご本人が協議などに参加する必要がありますが、Gさんのお話を伺った限りでは、おそらくCさんには意思能力なしとして、協議に参加できないのです。そうすると、代わりに協議に参加する人として、後見人をつける必要があります。ただ…
女性
なんでしょうか
弁護士
ただ、後見人は家庭裁判所に選任の申し立てをするのですが、その申立権者は、4親等内の親族、市区町村長、検察官のみなのです。つまり、内妻であっても、法律上の婚姻関係にない以上、後見人選任の申立てはできません。また、市区町村長や検察官が申し立てをしてくれることもほとんどあり得ません。そのため、申立ては、この通知を送ってきたAやBにお願いするのがいいかと思います。
女性
まさか婚姻届けを出さなかったことがこんなところで問題になるなんて… 電話で、状況を伝えればいいですかね。
弁護士
そうですね。電話して現状をお伝えして、後見人をつけてもらうのが良いかと思います。

Gは、早速家に帰って、L弁護士に電話をして、今のCの状況を伝えた。

 

解説&ポイント

ポイント相続人に認知症で判断能力がかなり低下している方がいる場合には、その方が協議書を作成しても無効とされてしまいますので、協議に参加することはできません。しかし、認知症の相続人を無視して協議書を作成しても効力はありませんので、無視することも当然できません。

そのような場合に、認知症の相続人の代わりに協議に参加してもらう代理人として、「後見人」が必要となってくるのです。後見人には、「法定」後見人と「任意」後見人があります。

法定後見人とは、認知症が進んだのちに、親族が家庭裁判所に後見人の選任を申し立てることによって選任してもらう制度のことです。一方、任意後見人とは、認知症になる前にその人と後見人になってほしい人の間で任意後見契約というものを締結し、認知症になった時にその任意後見契約をした人が家庭裁判所に任意後見「監督人」という人の選任を申し立てて、監督人が選任された時点で任意後見契約の効力が生じるのです。つまり、「任意」後見人は、認知症になる前に本人が自分で後見人を選べるという意味で「任意」ということです。

後見人は、身上監護及び財産管理等を行うことになり、遺産分割協議にも参加することができます。ただし、裁判所の許可を得ないと遺産分割協議はできないので、そういった手続きは必要になってきます。

後見人は、様々な法律行為を行うことになり、裁判所への報告をしなければなりませんので、想像以上に大変な仕事になりますので、後見人には法律の専門家である弁護士を選任してもらうなどしたほうが無難でしょう。

 

 

 

10 返事が返ってこない…

3月の終わり、もうすぐ年度も終わるころに、AやBは、打合せのためにL弁護士のもとを訪れていた。

弁護士
経過報告なのですが、CとDからは連絡が来ました。
男性
良かった。それで、返事の内容は…?
弁護士
まず、Cさんについてですが、正確にはCさんではなく、Cさんの内妻であるというGさんから連絡が来まして、Cさんは認知症が進んでおり、遺産分割協議はできないだろうと弁護士に言われたそうです。それで、AさんかBさんに後見人の選任をお願いしたいとのことでした。
男性
後見人ですか。何となく聞いたことはありますが、裁判所が選ぶ財産を管理する人のことですよね。必要なのですか。
弁護士
大まかにはBさんの理解でいいと思います。Cさんの様子はわかりませんが、弁護士に相談しに行ったというくらいですし、電話で話した内容も不自然なところはなかったので、認知症であることは間違いないでしょう。そうすると、後見人の選任は必要になってきますね。とりあえず、申立にあたっては、Cさんの財産関係や診断書などが必要になってくるので、そのやり取りはGさんとしておきます。
男性
わかりました。Dさんの方はどうですか。
弁護士
Dさんについては、M弁護士という方が受任したようで、法定相続分での遺産分割を求めるとのことでした。寄与分については、その証拠資料を開示してほしいとありました。振り込みを証明する預貯金通帳などの資料はありますかね。
男性
法定相続分でですか… それは仕方ないですね。預貯金通帳については、確認してみます。
女性
私の方は、何か資料と言われても…
弁護士
例えば、当時の日記やメモ、おむつ等の領収書はありませんかね
女性
領収書はさすがに取っていませんし… あ、でも、家計簿をつけていて、そこにメモ欄があるんです。そこには少し介護の愚痴も含めていろいろ書いてあります… 見せるのもお恥ずかしいのですが、今度持参します。
弁護士
資料の件は、よろしくお願いいたします。最後に、Eさんですが、Eさんに送った通知書は、『あて所に尋ねあたりません』と記載されて返送されてきましたので、住民票記載の住所に住んでいないようです。
男性
え、では、どうしたらいいのでしょうか?
弁護士
このような場合には、『不在者財産管理人』という人を裁判所に選任してもらう必要があります。この不在者財産管理人は、弁護士などが選任され、不在者の代わりに遺産分割協議に参加してもらう形になります。基本的には、後見人と同じような役割と思っていただいてよいかと思います。
男性
今度は不在者財産管理人ですか。後見人やら、不在者財産管理人やらいろいろな人が出てきますね…
弁護士
そうですね。今回の事案は、想像以上に様々な法律問題が絡んでくる事案となりましたね。とりあえず、このままでは遺産分割協議ができないので、後見人の選任と不在者財産管理人の選任の申立てをしましょう。
男性
先生、よろしくお願いいたします。

L弁護士は、後見人の選任の申立て及び不在者財産管理人の選任の申立てをするために準備を開始した。

 

解説&ポイント

ポイントおさらいですが、相続人の所在が不明である場合には、まず相続人の戸籍の附票ないし住民票を取得して、その住所に手紙等を出すことになります。

しかし、住民票を移動しないまま、どこかに行ってしまっていたりすることがしばしばあり、その場合には、通知は「あて所に尋ねあたりません」と記載されて戻ってきてしまいます。居場所が分からないからといって、無視することができないのは、認知症の相続人がいる場合と同様です。

では、どうすればよいのかというと、不在者財産管理人の選任を裁判所に申し立てて、不在者財産管理人という不在者の代理人を立ててもらい、その人に遺産分割協議に参加してもらうことになります。

もっとも、「あて所に尋ねあたりません」と書いていたとしても、他の相続人から電話番号や施設へ入所しているなどの情報をもらえることもありますので、すぐにあきらめるのではなく、しっかりと情報収集をした後に不在者財産管理人を選任してもらうようにするべきです。

 

 

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