連載コラム① 第3回「私の苦労は認められないの?」


高齢者

6 私の苦労は認められないの?

L弁護士は、C、D、Eの3人に送付するための「通知書」を作成し、遺産目録とともに、送る準備をするため、A及びBと打ち合わせをすることにした。

弁護士
Bさん、この通知書でよいですかね。何か書き足したいこととかはありますか?
男性
私は、2年前に父が病院に入院するまで、父にずっと仕送りとして月5万円を5年間くらい送っていましたし、私が父の家の近くに住んでいた5年前までは、私の妻が父の生活の補助や家事をしていました。父は、私の妻には本当にお世話になったと言っていましたし、そのことは考慮されないんですかね?
女性
5年前にBが小倉に引越してしまってから入院するまでは、私が週に1~2回介護をしていました。介護は大変でしたよ。お父さんは、ちょうど5年前くらいに転んで足を悪くして、自分で歩くのがほとんどできないくらいだったので、おむつを替えることや、お風呂に入れるなどは私がやってあげていました。週に2回程度とは言え、本当に大変でしたから、考慮してほしいです…。
入院してからも、週に1回はお見舞いに行って、物を買ってきてあげたりもしていましたからね。(少し語気を強めて述べる)
弁護士
まぁ落ち着いてください。お気持ちはわかります。介護などをしたことについては、『寄与分』というものがあり、相続においても考慮される場合がありますが、要件がありますし、どのくらい考慮できるかは難しい問題です。
男性
寄与分ですか…?
弁護士
寄与分というのは、相続人が被相続人の生前に看護をしたり、事業を手伝ったりして、被相続人の財産が減るのを防いだり、財産の増加に貢献したりした場合に、相続で考慮するものです。平たく言えば、相続人が亡くなった人のために頑張って、財産が維持できた場合には、考慮してあげようというものです。
男性
よくわかりました。でも… そうすると、相続人ではない人の寄与というのは認められないということですよね。私の妻の介護は無駄だったということですか…
弁護士
いえ、そんなことはありません。Bさんの配偶者の寄与も、Bさんの寄与とみなして寄与分が認められることはありますので、大丈夫です。ただ、お話を聞いている限り、5年前までは、要介護1程度の状態ですよね?
男性
はい。父親は5年前までは要介護1で、その後に転んだことなどによって要介護3になりました。これも関係あるのでしょうか?
弁護士
寄与分には、いくつかの類型があり、今回は療養看護型と金銭等出資型の二つの寄与があり得ると思いますが、まずは療養看護型を説明しますね。
療養看護型は、
① 被相続人が、療養看護の必要な状態にあること
② その貢献が不要の範囲を超えた特別なものであること
③ 無償であること
④ 貢献によって、財産の維持または増加があること
の4つの要件を満たす必要があります。
弁護士そして、②については、その判定のために介護認定が用いられることが多く、要介護1くらいですと、②の要件は満たさないと言われているのです。要は、要介護1程度の状態を看護しても、特別の貢献とはいえないということですね。要介護2以上が目安です。ただ、要介護1であっても、実態が要介護2以上のこともあるので、絶対に寄与分が認められないというわけではありません。
男性
そうなんですね… お世話をしたのに妻の苦労は報われないのですね…
弁護士
結果としては、そうなってしまう可能性が高いですね。ただ、寄与分が認められないとしても、通知には書いていくのは必要かもしれません。その点は、通知にも反映させましょう。
男性
ありがとうございます。是非お願いします。
女性
私の介護は、寄与分が認められるのでしょうか?
弁護士
Aさんが介護していた当時は、お父様が介護3の状態ということですし、無償で行っていたのであれば、介護報酬算定基準を参考に一部は寄与分が認められるでしょう。ただ、介護報酬満額が認められるわけでなく、特別の貢献として 0.5 ~ 0.7をかけた程度になるのが通常です。もっとも、事案ごとに事情が異なるので、目安として考えておいてください。
女性
自分のしてきたことがすべて無駄になるわけではなさそうで良かったです。
男性
私の父への仕送りはどうなるのでしょうか?
弁護士
お父さんへの仕送りも寄与分として認められる可能性はあります。ただ、こちらも総額300万円全額は難しいでしょうね。
男性
わかりました。先生、通知書の作成お願いします。

打合せを終えて、L弁護士は寄与分等を盛り込んだ通知書を作成し、A及びBの確認を得て通知書をB、C、Dに郵送した。

 

解説&ポイント

ポイント相続の際に問題となる点はたくさんありますが、その中で、法的にも感情的にも争いになりやすいのが、寄与分と特別受益です。特別受益については、次のエピソードで解説をしますので、まずは寄与分について解説をしたいと思います。

まず、寄与分とはどういったものかですが、簡単に言ってしまえば、「相続によって財産を受け取る人が、亡くなった方の財産が減るのを防いだり、財産を増やしたりすることに貢献していた場合に、その貢献を相続の際に考慮しましょう」というものです。

寄与分の類型はいくつかありますが、わかりやすいところで言えば、介護です。例えば、被相続人が足が悪いため、自分でお風呂に入ったり、排せつ行為をすることが難しく、その介護を行っていたということは少なくありません。このような場合、親身になってずっと介護を続けた人が、相続の際に介護をしていなかった人と同じ取り分では、あんまりだと思うのが人情というものです。そのため、人情だけではなく法律上、介護によって財産が減るのを防いだ分を寄与分として認めて、貢献した人に多く相続させてあげようとするのが、寄与分なのです。

この場合の寄与分はどのように算定するのでしょうか。正直なところ、算定に決まりはありませんが、「介護報酬基準」が用いられることが多く、協議にあたっても参考になる基準です。

もっとも、介護報酬基準については、場所によっても単位当たりの報酬が異なるため、その点はしっかりと計算が必要になってきます。加えて、介護報酬はプロの介護者を念頭において用いられている基準ですから、素人であり、かつ親族に対する扶養義務がある相続人においては、基準額をそのまま用いるのではなく、基準額に50~80%の割合をかけたものを用いるべきと言われています。

電卓仮に、本文を例にすると、要介護3で日当が約6000円程度ですから、要介護3の方を1週間に3日、3年間介護し続けたとすれば、以下のような計算になります。

6000円 × 2日間 × 5年間(52週間 × 5 = 260週間)= 312万円
これに 70%の割合をかけて、218万4000円が寄与分であるというように算定ができます。ただし、これはあくまで基準額を参考にした場合ですから、裁判所においては個別具体的な事情を考慮して判断が出されますので、裁判所でも同じ結論が出されるとは限りませんので、あくまで協議の参考として考えましょう。

寄与分については、論点も数多くあり、ここで解説しきれるものではありませんので、下記のコンテンツやQ&Aを参考にしてください。

寄与分について詳しくは、こちらをごらんください。

寄与分についてよくある相談Q&Aはこちらをごらんください。

 

 

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