遺産から葬儀費用を支払った場合も相続放棄できますか?



葬儀のイメージ葬儀費用は親の預金を解約して支払い、仏壇も預金の残りで買いました。

その後、親には多額の借金があることが分かりました。

この場合、相続放棄できるでしょうか?

 


相談する女性のイラスト葬儀費用が不相当な額ではなく、仏壇も通常の物であって、社会通念上相当な範囲であれば、相続放棄をすることはできると思われます。

相続問題に詳しい弁護士が解説いたします。

 

 

相続放棄できない場合

 

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内であればできると民法上規定されていますが、単純承認をした場合には、相続放棄ができなくなります。

単純承認は、相続放棄や限定承認と異なり、法律上、方式の定めがないので、家庭裁判所に申述を申し立てる等の手続きは不要とされています。

 

 

法定単純承認

 

単純承認には、法定単純承認といわれるものがあり、以下のことをすると法律上、単純承認をしたとみなされることになります。

 

① 相続財産の処分をしたとき
② 相続放棄できる期間に相続放棄をしなかったとき
③ 限定承認・放棄後の背信的行為

 

②は最も多い事由であり、相続放棄をするつもりのない多くの人が②によって法定単純承認をしているといえます。

 

 

相続財産の処分をしたときの解釈

お墓相続財産の処分をしたときに、「相続財産から葬式費用等を支払うこと」が含まれるかの判断は難しいところです。

葬儀費用等を支出した場合については、裁判例でも学説でも、一定の範囲内については法定単純承認とはならないとしています。

 

● 東京控判昭和11年9月21日

「遺族として当然営まざるべからざる葬式費用に相続財産を支出するが如きは道義上必然の所為にして」法定単純承認には該当しないと判示していますが、当然営まなければならない葬式費用の範囲は不明確です。

 

● 大阪高決平成14年7月3日

「被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。」としており、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」には当たらないと判示しています。

裁判所

 

これらの裁判例からすると、般的に許容される範囲で葬儀費用を相続財産から支払ったとしても、法定単純承認とはならないと考えられます。

もっとも、どの範囲が許容される範囲かは不明確なため、被相続人に多額の債務がありそうな場合には、葬式費用等を相続財産から支出することは控えたほうが良いと思われます。

なお、同大阪高決では、相続財産で仏壇や墓石を購入したことも、法定単純承認とはならないとしているのは参考になるところです。

 

 

弁護士へご相談ください

 

以上のことから、被相続人が死亡した場合に、相続財産から葬儀費用を支出したり、仏壇を購入したりする行為は、法定単純承認とはならないということがいえます。

もっとも、これらの判断は、葬儀用の支出や仏壇の購入が、一般的に行われており、債務があったとしてもすべきこととして認識されているからこその判断であると考えられます。

そのため、多額の債務があることを知った後に、その債務者を無視して葬儀費用などに多額の相続財産を支出した場合には、法定単純承認とされる場合もあると考えられます。

相続財産を超える債務があることを知っている場合、もしくはある可能性が高い場合には、相続放棄ができなくなるリスクもあるので、相続財産からは葬式費用や仏壇を購入するのは控えたほうが良いでしょう。

お金のイメージ画像法定単純承認については、専門家ではなければ判断が難しいですから、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

当事務所では、相続に特化した弁護士が相談に応じますので、一度気軽にご相談ください。

 

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