父が亡くなり、父が経営していた会社の事業用の財産や株式を遺言によって贈与を受けましたが、他の相続人から遺留分として返還を請求されています。財産や株式そのものを返還しなければならないのでしょうか?



answer

会社

現物を返還するのが原則ですが、価額で弁償することも許されます(民法1041条)。

これは、現物を分割することによって、経済的・社会的価値を著しく喪失する場合に現物での分割や返還を免れるためです。

今回のように、たとえば事業承継のために相続人の一人に事業用資産や株式を集中する遺言をのこした場合、その相続人は、価額弁償によって事業用財産の分割を免れ、会社の経営権を保持することができるのです。

では、全ての財産について価格弁償をしたいが、その価格分のお金を準備できない場合にはどうしたらよいのでしょうか。
その場合には、個別の財産についてのみ、価額弁償をする、しないということを決めることができます(最高裁判所第三小法定判決平成12年7月11日)。

たとえば、本ケースのように、ある会社の株式全部と、事業用の財産の遺贈を受けた場合、会社の支配権だけは確保したいとします。
そうすると、株式については現物をそのまま自分のもとに置いたまま、その価格分を他の遺留分権利者に支払うことで、株式を取得し、会社の支配権を維持することができます。

ちなみに、価額弁償がなされる場合には、現実に弁償がなされるときの目的物の価額が基準となり算定されます。
訴訟の場合には、事実審の口頭弁論終結時ということになります。
したがって、特に価値が短期間で変動しやすいようなものについては、価額弁償の時期を見極める必要があります。

なお、遺留分権利者から現物返還請求又は価額弁償請求を受ける前であっても、受遺者などから弁済すべき額の確定を求める訴えを提起することは許されます(最高裁第二小法廷判決平成21年12月18日)。

本ケースのように、会社の問題と相続の問題が絡み合って問題となるケースは多くあります。
このように単純な問題であればよいのですが、実際に起こる紛争はそう簡単にはいきません。
今後会社をどのようにしていくかという将来的なビジョンも踏まえ、慎重に財産の処分を決する必要があります。

そのような場合には、ぜひ一度法律のプロである弁護士に相談してみてください。少しでも皆様の悩みを軽減できれば幸いです。

 

 

関連Q&A


[ 相続Q&A一覧に戻る ]
 

弁護士が教える!相続お悩み別解説